叩かれる理由の2つめは、原作『ダンダダン』ならびに作者の龍幸伸先生(慣例に倣ってアーティストは呼び捨て、漫画家は「先生」付けであることをご理解願いたい。他意は微塵もない)が神扱いされていることである。

 同作はコミックス累計発行部数が1000万部を超していて、人気漫画アプリのジャンプ+の中でも看板作品の一つである。

 これはストーリーの面白さもさることながら、毎週すさまじい熱量(と作業量)が吹き込まれた迫力の作画が披瀝されるからで、本当に個展で展示した方がいいんじゃないかというレベルの絵が作中の1ページに惜しげもなく使われる。

 そのクオリティの作品がほぼ休まず毎週更新されているので、コメント欄では毎週「いつもありがとうございます。でもご無理せずに」といった作者を気遣う言葉が飛び交うほどである。

 であるから、『ダンダダン』は信者を多く持つ人気作品で、アニメ化されたことも重なって非常に勢いがある。他方、YOSHIKIはレジェンドで活動も現役で行っているがポップカルチャーど真ん中というほどではない。

 そして『ダンダダン』側が全面的にお詫びしたので、「実力と勢いがあるにもかかわらず謙虚で低姿勢な若手」vs「ちょっと偉そうなレジェンド」という見え方が目立ってしまった。となれば前者に応援が傾くのは人情である。

ネットメディアが喜んだ
フジテレビやジャニーズと同じ匂い

 叩かれている理由の3つめは、2つめに関連しているのだが、『ダンダダン』vsYOSHIKIの構図が、反権力が好きなネットメディアの格好のターゲットとなったことである。

 特に最近はフジテレビやジャニーズの不祥事による凋落や、それを含んだ時代の趨勢による「押されるテレビと台頭するネット」などの、下剋上とまでは言わないがニューウェーブが絶対王者を凌駕していく革命が世相に色濃く漂っていて、またその展開が世間から好まれてもいる。