
私立大学の歯学部に入学して6年間のうちに歯科医師国家試験合格までたどり着く学生は半分にも満たない。この「国試ストレート合格率」が7割を超える大学がある一方で、3割を切る大学もある。私立17歯学部の中でかなり幅があるのだ。連載『教育・受験 最前線』では、全国歯学部の実力と経営にランキングで切り込む「歯学部ランキング」を複数回にわたってお届けする。第2回は全国私立17歯学部について、過去5年間のデータに基づいた「国試ストレート合格率」ランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
受験先選びで目を光らせるべき
「国試ストレート合格率」
歯学部人気の低迷が長らく続き、私立大学では17歯学部のうち11歯学部が入学定員割れしている(5年間の平均)。うち2歯学部は、入学者数が募集人員の半分も埋まらなかった(『歯学部「入学定員割れ」ワーストランキング【全国私立17歯学部】2位は鶴見大学、1位は?歯科医師不足懸念で入りやすい歯学部は“狙い目”か』参照)。
大幅に定員割れしている歯学部は、相対的に入試難易度が低いところが多い。どうしても歯科医師になりたい受験生にとっては、入りやすい“穴場”に映る。確かに歯学部入学という点で、穴場だ。
歯科医師になるには、最終関門で歯科医師の国家試験に合格する必要がある。医師の国試は合格率(合格者数÷受験者数)が例年9割を超えているのに対し、歯科医師の国試は合格率6~7割にとどまる。医師よりも歯科医師の方が合格率は低い。
背景として、国は歯科医師過剰を解消するべく、国試の合格者数を絞り込んできた。かつては合格者数が3000人を超えたりもしたのに、近年は2000人を割ることもある。01年の合格者数は3125人で合格率90.7%だったのに対し、24年は合格者数2060人で合格率66.1%、25年は合格者数2136人で合格率70.3%だ。
問題はこれで終わらない。歯学部に入学した学生が留年せずに6年間のストレートで国試に合格する割合で見ると、およそ5割。合格率はさらに下がる。国試を受けるまでに留年や退学をしたり、卒業試験に落ちたりして、6年間のうちに国試受験までたどり着かない者もいるからだ。
さらに私立歯学部に絞ると、この「国試ストレート合格率」は5割を切る。合格率が7割を超える大学がある一方で、3割を切る大学もある。私立17歯学部の中でかなり幅がある。
学生が集まらずに入学のハードルが下がった歯学部の場合、大学側は学力が十分でない学生を受け入れた分、国試合格まで導くのに難儀する。学生側にすれば、想定した時間と学費を費やして歯科医師資格を取得できなければ、“落とし穴”にはまったと後悔するかもしれない。
なんにせよ、各歯学部の国試ストレート合格率は、6年間で歯科医師を養成する実力を測る指標になる。受験先選びでは、入試難易度だけでなく、ここにも目を光らせたい。そこで、ダイヤモンド編集部では、私立大学17歯学部を対象に、過去5年間のデータに基づいて国試ストレート合格率のランキングを作成した。
次ページでは、このランキングを一挙公開する。ランキングを見ると、国試ストレート合格率と入試難易度や定員充足率にある程度の相関関係がうかがえるものの、必ずしも当てはまっていない。意外に合格率が高いのはどこか。合格率が低いのはどこか。