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次に共学化や募集停止を決断する女子大学はどこか。大きな決断を下す大学は、偏差値などの入試データに前触れが表れることも。連載『教育・受験 最前線』では、連載内特集『大学入試2026』を10回以上にわたってお届けする。第10回は全国29女子大の44年間の偏差値推移データを一挙掲載するとともに、共学化や募集停止に踏み切る可能性がうかがえる女子大を探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
武庫川女子大の共学化
偏差値と入学者数に“前触れ”
武庫川女子大学は2027年度に共学化することを今夏、発表した。国内最大規模のマンモス女子大だけに反響が大きく、見直しを求めるオンライン署名は5万人を超えた。女子大だから進学した学生は卒業するまで共学化を待ってほしかっただろう。一方で、経営的に見れば、発表から共学化するまでの期間が長いと、女子大志向の女子学生も、男子学生も入ってこない苦しい運営になる。
女子大離れとともに少子化が加速する中、女子大の共学化ラッシュが起きている。25年度には清泉女学院大学(現・清泉大学)、東京家政学院大学、名古屋女子大学(現・名古屋葵大学)、神戸松蔭女子学院大学(現・神戸松蔭大学)、園田学園女子大学(現・園田学園大学)が共学になった(段階的移行を含む)。26年度には女子栄養大学、岡崎女子大学、京都光華女子大学が、27年以降は仙台白百合女子大学、広島女学院大学、松山東雲女子大学、鎌倉女子大学が共学化を予定している。
京都女子大学は今夏に女子大であり続ける「女子大学宣言」を掲げたが、水面下で共学化や閉学に向けた募集停止の検討をしている女子大が口を開くことはない。
受験生はそれを予期できれば、受験先選びの材料になる。予兆が表れる最たるものは、財務など経営に関するデータだ(『武庫川女子大の「共学化」に反対署名5万人超!責められても男子を募集する“女子大の懐事情”【武庫川・女子栄養・岡崎女子・京都光華・清泉女学院・東京家政学院・名古屋女子・神戸松蔭・園田学園】』参照)。加えて、偏差値などの入試データに前触れが表れることもある。
武庫川女子大の場合、ベネッセコーポレーションが公表している偏差値(「進研模試」の成績。合格可能性60%以上80%未満のライン)において、13学部のほとんどが50台か60台(25年偏差値)で、他の女子大と比べると難度は高い。ただし、25年4月に開設した環境共生学部は初年度61(24年偏差値)だったものが、2年目に59(25年偏差値)まで下がっている。
一見すると小さな変化だ。しかし、環境共生学部の初年度入学者数を見ると定員120人に対し31人しか入学しなかったという点と結び付けると、事の重大さが分かる。
武庫川女子大はこれまで、建築学部や経営学部など旧来の女子大らしからぬ学部を拡充して総合大学化を進めてきた。その結果、女子受験生からの人気を集め、大幅定員割れが続く女子大があふれている中で、定員を満たしてきた。25年度入試も大学全体では定員の9割超を満たしているが、学部別では定員割れ大きいところがちらほら。中でも新設の環境共生学部は振るわなかった。
複数の要因が重なっているだろうが、女子学生だけを対象に総合大学を続けることへの限界を感じないはずはなかった。
次ページでは、国公立および私立29女子大の44年間の入試偏差値の推移データを一挙掲載し、共学化や募集停止に踏み切る可能性がうかがえる女子大を探った。







