
「歯科医師過剰」の時代が続いて、歯学部は長らく人気が低迷してきた。しかし医療の現場で今、将来の「歯科医師不足」が懸念されるようになっている。歯科医師の需給がタイトになるということは、歯学部が“狙い目”の進学先になり得る。とはいえ、長年の不人気で歯科医師を養成する実力、学校を経営する力がそがれた大学もある。連載『教育・受験 最前線』では、全国歯学部の実力と経営にランキングで切り込む「歯学部ランキング」を複数回にわたってお届けする。第1回は全国私立17歯学部について、入学定員をどれだけ満たしているかを示す「入学定員充足率」のワーストランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
定員割れ歯学部は”穴場”か?
あるいは”落とし穴”か?
歯学部の中には大幅な定員割れが続いている大学がある。歯科医師が多すぎて稼げない職種扱いされ、受験人気が低迷したためだ。これまで国は、歯科医師数を抑制するために歯学部の定員削減策を実施してきた。それでもなお、埋まらないのだ。
薬学部でも定員割れは起きている(『薬学部「入学定員割れ」ワーストランキング【全国私立60薬学部】2位は徳島文理大、1位は?』参照)。しかし、薬学部と歯学部では、決定的に異なる点がある。薬学部が養成する薬剤師は、これまで需要が多かったのに、将来は供給過剰になるという見通しが出ている。対して歯学部が養成する歯科医師は、これまで供給過剰が問題視されていたのに、将来の不足が懸念されるようになっているのだ。
受験人気が低迷して入りやすくなった歯学部は総じて、“狙い目”の進学先となり得る。定員割れしている歯学部は、“穴場”という解釈もできる。
ただし、人によっては穴場が”落とし穴”になる。歯学部に入ることがゴールならば、確かに穴場だ。でも歯学部入学は、歯科医師になるために学ぶスタートラインに過ぎない。入りやすくても歯科医師を養成する実力が他大より劣り、歯科医師国家試験合格にたどり着けないようであれば、最終的に落とし穴だったと感じるかもしれない。
そこでダイヤモンド編集部では、歯学部について、さまざまな角度からランキングを作成した。今回のテーマは、歯学部の入学定員をどれだけ満たしているかを示す「入学定員充足率」(入学者数÷入学定員)だ。
24年度でみると、国公立大学の12歯学部は全て入学定員を満たしているのに対し、私立大学は17歯学部のうち9歯学部が募集人員に対して定員割れ。過去5年間を平均すると、私立11歯学部が定員割れしている。
次ページでは、全国私立17歯学部について、過去5年間のデータに基づく入学定員充足率ワーストランキングを一挙に公開する。