
九州を地盤とし、郊外型ディスカウントストアを全国で展開するトライアルホールディング。かねて表明していた、都市型の小型業態「トライアルGO」の東京都内での出店戦略について、その一端が見えてきた。判明した初出店地の周辺には、ファミリーマートやセブン-イレブン、ローソン、イオン系のまいばすけっとの他、地場の食品スーパーがあり、大打撃を受けることは間違いなさそうだ。(ダイヤモンド編集部 片田江康男、下本菜実)
九州発のトライアルホールディングス
「トライアルGO」都内へ同時期に2店出店へ
トライアルホールディングス(HD)の“都内進撃”戦略の一端が明らかになった。
トライアルHDは今、最も注目される小売企業だ。短期間で急成長を遂げただけではなく、同社の開発した都市型の小型業態が、コンビニエンスストア業界や食品スーパー業界の競争環境を一変させる潜在力があるとみられているからだ。
福岡県に本社を構えるトライアルHDは、2000年代初頭から九州を中心に郊外型ディスカウントストアを展開してきた。当時からデジタル化や居抜き出店などによる、ローコスト経営を徹底。それによって得た価格競争力を武器に、2000年代の不景気をものともしない右肩上がりの成長を続けてきた。
25年6月期の連結売上高は8038億円、営業利益211億円で25期連続増収を達成。25年7月に連結売上高4835億円(24年12月期)を誇る総合スーパーの西友を買収したことで、その名を全国区にした。グループ全体の売上高は1兆2014億円に到達し、売上高規模でヤマダホールディングスに次ぐ、小売業界6位にまで躍進したのだ。
主力店舗は売り場面積約4000平方メートル級の「スーパーセンタートライアル」。同8000平方メートル級の「メガストア」なども含めると、25年8月時点でグループ全体の店舗数は全国358店舗を数える。
そんな急成長中のトライアルHDは、都市型の小型業態である「トライアルGO」を開発し、22年から福岡県内で出店を始めた。16年に、アマゾン・ドットコムがAI(人工知能)やカメラ、センサーを駆使した無人の小型店舗「アマゾンGO」を米国内で出店したが、トライアルHDはそれをヒントに業態開発を進めたもようだ。
アマゾンGOと違うのは、既存のトライアル店舗で調理した、出来たての総菜や弁当を、周辺に出店したトライアルGOへ、1日複数回にわたり配送する仕組みだ。この仕組みと、グループで培ったローコスト経営による低価格戦略が当たり、福岡県内で出店した店舗は、周辺のコンビニや食品スーパーから顧客を奪ってきた。
その成功体験を引っ提げ、トライアルGOがいよいよ11月上旬に、都内にオープンする。九州発のトライアルHDの、満を持して都内進撃である。その具体的な立地が、このほど明らかになった。周辺のコンビニや食品スーパーは、商圏の競争環境が激変するため、大きな影響を受けることは間違いない。次ページで、判明した立地とその影響について詳報する。