
急成長中の大手ディスカウントストア、トライアルホールディングス(HD)が開発した新たなコンビニ業態「トライアルGO」。11月上旬から東京都内に本格出店を開始し、セブン?レブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3強に対してシェア争いを挑む。そんなトライアルHDには、都内進撃を支える3人のキーマンが存在する。特集『揺らぐコンビニ3強 トライアルGOの衝撃』#1では、3人の担ってきた役割と経歴を紹介する。いずれも競合する大手小売り各社には珍しい人材だった。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
一介のディスカウンターではない
急成長したトライアルの実像
「九州で居抜き出店によって巨大化したディスカウンター」。これは、小売業界関係者がトライアルホールディングス(HD)について語るとき、必ずといっていいほど話される評価である。
実際、トライアルHDの前身であるあさひ屋は、1974年に開業した福岡市のリサイクルショップだった。92年にディスカウントストア「トライアル」へ業態を転換。2000年代初頭に総合スーパー(GMS)の撤退が相次いでいたことに目を付け、その跡地に出店する戦略で勢いに乗った。
GMSは長らく小売業界を代表する業態だった。その凋落を尻目に出店を続けるトライアルHDを、小売業界関係者がいまいましく思っていたことが、冒頭のような言葉につながっているのだろう。
トライアルHDが当時から徹底していたのはローコスト経営だ。居抜き出店に加えてIT化も進め、ひたすら価格競争力を磨いた。それは不景気を物ともしない成長力に結び付き、25年6月期には連結売上高8038億円、営業利益211億円に到達。25期連続増収という、文字通り右肩上がりの成長を実現させた。
トライアルHDが小売業界内外で無視できない存在であると決定付けたのは、25年3月の大手総合スーパー西友の買収だった。連結売上高は1兆2000億円超となり、ヤマダホールディングスに次ぐ国内の小売業で6位に躍進。注目度は一気に増し、“九州のディスカウンター”から完全に全国区の大手小売りグループとなった。
そして11月、トライアルHDは注目度がさらに高まる施策を始める。22年から独自に開発し、地元福岡県で実験的に展開していたコンビニ業態「トライアルGO」を、東京都内で本格的に出店するのだ。セブン-レブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3強や都内地場スーパーに、真っ向勝負を仕掛けるわけだ。
トライアルHDの武器は、30年かけて磨いたローコスト経営と低価格戦略だ。実験では、近隣のコンビニから顧客を奪うなど威力抜群。都内出店でも同様の戦略を進めるはずだ。競合する小売り各社は、一介のディスカウンターと過小評価していると、痛い目に遭うことは間違いない(『ファミマ・セブン・ローソン・まいばすに激震、コンビニ「トライアルGO」都内初出店地が判明!九州発ディスカウントストアの雄トライアルHDが関東進出』参照。
そんなトライアルHDには、これまでの躍進と“都内進撃”に挑む3人のキーマンが存在する。
トライアルHDの目指すべき方向性と青写真を描いたのは、創業者である永田久男会長だ。ただし、そのビジョンや青写真を実現させる人物がいなければ、今のように小売業界で話題をさらうことはなかったはずだ。興味深いのは、3人が “非小売り”人材であることだ。早速、次ページで3人の実名と経歴を紹介しよう。