Photo by Masato Kato
ファミリーマートは、1990年代に「裏原宿系ファッション」の火付け役となったクリエーターを起用し、マーケティングやサイネージ事業の強化に取り組むなど、新たな戦略を進めている。一方で、ディスカウント業態を展開するトライアルホールディングスが、11月から東京都内でコンビニ業態「トライアルGO」の出店を開始するほか、イオン系の小型スーパー「まいばすけっと」も出店を加速させている。競争激化が進む中で、同社はどう変わろうとしているのか。特集『揺らぐコンビニ3強 トライアルGOの衝撃』#5では、陣頭指揮を執る細見研介社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)
加盟店利益は19年比で33%増
セブンの背中は見えている
――2025年上期は、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手を起用したキャンペーンが話題となりました。
2月末に大谷選手にアンバサダーに就任していただき、3月の発売初週からロケットスタートを切ることができました。コンビニは飲料の売れ行きが伸びる6~8月が最盛期ですが、今年は猛暑でなかなか客足が伸びず、3~5月が勝負どころだった。ロケットスタートから好調を維持できたことが上期の結果でした。
――大谷選手はおむすびのアンバサダーですね。特に米飯が伸びたのですか。
もちろん、おむすびが伸びたのですが、米飯商品には“シャワー効果”があります。米飯の伸びが、全体の売り上げに寄与しました。
――上期の決算では、既存店の客数は99.9%の着地でした。2月からおむすびや弁当、カウンターコーヒーなどで行った値上げが響いたとみていますか。
インフレが進行する中で、買い上げ点数が減少してきています。1品の値上げの幅が大きいので、消費者の財布のひもが固くなっている。ですが、高単価でも価値を感じていただける商材を打ち出し続けていけば、買い上げ点数の減少とバランスを取っていけるのではないかと考えています。
――トップチェーンのセブン-イレブンは、9月から一つ300円台の「相盛おむすび」を投入しました。また、秋から首都圏に進出するトライアルGOは、九州ではコンビニより低価格でおむすびを並べています。おむすびの値付けをどう考えますか。
上期、ファミリーマートはコンビニの中でいち早く備蓄米の販売を行いました。結果、多くのお客さまから「やるじゃないか」と応援のメッセージを頂きました。
1キロ単位で販売したことも好評で、まずは少量を買って味を確かめて、次に大容量のものを買っていただくという流れもありました。これはコンビニの特性である、小分けで買っていただきやすいという機能を十分に生かせた結果だと思います。
おむすびの値段は、外国産の米なども検討しながら、求めやすい価格を維持していきたいと考えています。
――まいばすけっとやトライアルGOは、少ない人件費で回せるモデルです。まいばすけっとは30年までに現在の約2倍となる2500店舗への拡大を計画しており、トライアルGOは秋から首都圏に進出します。彼らにどう対抗しますか。
ファミリーマートは競合にどう対抗するのか。有名クリエーターを起用し、マーケティングやサイネージ事業で協業する意図とは。次のページでは、細見社長が「アポロ計画」の進捗や、新規事業で想定以上に売れた高価格帯商品を明かす。







