総予測2025#55Photo by Masato Kato

コンビニエンスストア3強のファミリーマートは、新型コロナウイルスの感染拡大の収束以降、業績を堅調に伸ばしている。特集『総予測2025』の本稿では、ファミマの細見研介社長に次なる一手について聞いた。細見氏は、店舗の限られた売り場拡大をはかる「アポロ計画」なる構想を明らかにした。着実な利益の向上が見込めるという秘策の中身とは?(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

24年秋から経済活動が活発化
店舗の売り場を拡大する秘策

――2024年を振り返ってみてどうでしたか。

 コンビニエンスストアは、春と夏がヤマ場ですが、24年は暑過ぎて、外出控えが起きて夏は思ったほど良くなかったです。生コッペパンなどのヒット商品も出せましたが。秋以降は温暖で数字は良くなっています。ただ、23年からのインフレの加速もあり、落ち着いた経営環境ではありませんでした。

――消費者の購買動向に変化は?

 夏ごろまでは二極化が顕著でした。安いものを求める一方、吟味しながら高いものを買うような行動ですね。なので、値上げしても買ってもらえる商品を投入することを意識しました。実際、客数は好調なので、お客さまには支持をしてもらえたのかなと。

 秋からは人の流れが一気に加速しました。特に東京都内。11月の客数は前年同月比3%増、都内だと同5%増。経済活動が非常に活発化してきたのです。

――正常化したということですか。

 正常化ではなく、違う競争が始まったとの受け止めです。4年前とは為替水準も違いますし、利上げもありました。金利のある世界では、競争が激化するのでしょう。

――地政学リスクも高まる中で、新たな競争にどう挑みますか。

 経営環境が激変することを念頭に置き、環境に左右されずに地道にビジネスを伸ばす必要があります。つまり、変化に対応するのではなく、予見できることに取り組むわけです。具体的には、店舗の売り場を拡大します。

――イートインを減らしていく方針ですが、そのことでしょうか。

 それと、もう一つの施策を温めてきていて、25年から大展開します。名付けてアポロ計画。

次ページでは、細見氏が売り場拡大の秘策である「アポロ計画」の中身や、実行する理由について明らかにする。小売業では深刻化する人手不足や、親会社の伊藤忠商事の参画が報じられたセブン&アイ・ホールディングスのMBO(経営陣による買収)構想についても聞いた。