(1)従業員の多様な働き方を認める
(2)職務や成果などに見合った給与体系とする
(3)厳正な評価を行い、納得と意欲を引き出すマネジメントを確立する
ミドルシニア社員には自身の納得と選択の上で実力を発揮してもらい、重要な戦力として企業利益に貢献してもらうことが、これからの人事制度が進むべき方向性になる。
企業の規模によって
人事の裁量は異なる
(1)(2)は制度の問題であり、(3)は制度とそれを運用するマネジメントの問題である。一番難度が高いのが(3)であろう。目標に対して厳正に評価する。結果のフィードバックを通じて納得と次の意欲を引き出す。
大企業では、従業員の評価にあたって、コンピテンシー評価(編集部注/業績上で高いパフォーマンスを出している人のコンピテンシー〔行動特性〕を設定し、これを基準として人事評価を行う方法)や行動評価などを取り入れている企業が少なくない。
しかしコンピテンシー評価は、会社が求める能力を持っているか、能力を発揮しているかを評価するものであるから、一度所持した能力は下がりにくいことを前提にしていることがほとんどだ。また行動評価についても、よほど問題行動がない限り、極端に低い評価にはならない傾向にある。
つまり、コンピテンシー評価や行動評価によって報酬を大きく上下させることは容易ではない。コンピテンシー評価や行動評価は、多くは一定の給与を保証する安全弁のような機能を果たしているともいえるのである。
結果として、厳しい評価を付けた、または厳しい評価をフィードバックした経験は多くない。降格を決め、フィードバックした経験も多くないはずである。そのため、多様な働き方、多様な処遇のためには(3)を欠かすことはできない。
なお、中小企業に関してはまた話が別である。規模の小さい企業は、多くの場合において人事評価や等級決定の役割はオーナー社長などが担っている。このため、良くも悪くも経営者や役員による裁量的な人事が、これまでも比較的柔軟に行われてきたというのが実態である。
いずれにせよ、大企業においても、ミドルシニア社員が増えるこれからの時代においては、多様な働き方に対応すること、またそれに応じて年齢に関係なく職務や成果に見合った給与体系とすることが必須だ。