マネジメントの高度化が
制度運用に与える影響

 そして、その必要条件となるのは、きちんと評価を行うための、また被評価者に納得してもらえるための高度なマネジメントである。1年ごとに部下のパフォーマンスを適切に評価し、報酬の上下やその理由について、相手が納得できるように説明しなければならない。

 ミドルシニア社員の活躍を促すにあたっては、この問題が顕著に表れる。マネジメントの高度化が、柔軟な制度運用の壁として大きく横たわっているのである。

 社員構成の高齢化と人手不足が併存する現代において、環境変化に適応するための人事制度改革は必須である。そして、ここにきて、ミドルシニア社員を適切に処遇するための人事制度改革を進める企業が急速に増えているということもまた事実だ。

 高齢者雇用における矛盾の解消に向けた人事制度改革が、ここ1~2年で大きな広がりを見せているのである。各メディアで報道されているものの中から、その代表的な事例を挙げたい。

・三菱UFJ銀行

 2025年度から、60歳の定年退職後に再雇用となった行員の給与を最大で4割上げる。また、勤務日数の限度を週4日から週5日に拡大し、現役時代の収入を維持できるようにする。現場の人手不足感が強まる中、ミドルシニア層の働く意欲を高める狙いだ。

・カルビー

 60歳定年の同社では、再雇用社員を対象に65歳を超えても契約し続けられる「シニアマイスター」職を2024年に新設。シニアマイスターとは「社内で右に出る者がいない強み、習得に長期間を要する熟練のスキルや専門知識等の高度な専門性を持ち、それらを生かして組織業績に貢献し、かつ後継者への伝承に取り組んでいる」と定義。報酬は、定年到達時の処遇をそのまま引き継ぐ。契約期間は、3年を上限に、会社・本人の双方合意の上で決定する。

・サントリーホールディングス

 役職や収入が一律で落ちる60歳の壁をなくし、優秀な人材に報いる。管理職を降りて部下を持たない人でも、実力本位で評価する仕組みにした。2020年には65歳以降を対象に非常勤として雇用する再雇用制度を導入。70歳まで働ける道筋を用意した。