
高市トレードで株価最高値
意図せざる物価高進む可能性
高市早苗・元経済安全保障担当相が、10月4日の自民党総裁選挙で勝利し、今月中旬、国会での指名を受け新首相になる見通しになった。
高市氏が掲げる「強い経済」、成長重視の経済政策については、本人が第2次安倍政権のアベノミクスになぞらえて「サナエノミクス」と呼んでいる。積極財政と金融緩和の維持は2本柱だ。
株式市場は、アベノミクスの既視感もあって、早速、反応し、日経平均株価は週明けの6日、7日と、一時は4万8000円台を超え、7日の終値は4万7950円88銭と、連続で史上最高値を更新した。為替市場でも約2カ月ぶりに1ドル150円台まで円安が進んだ。
しかし、2013年に発動されたアベノミクスとは区別して考えるべきだろう。アベノミクスは、デフレ下で「拡張財政+金融緩和」を実施した。それに対し、サナエノミクスはインフレ下で実施されようとしている。異なる経済環境ではおのずと政策効果も異なるだろう。
消費者物価(生鮮食品を除く)の上昇率は、直近公表の8月は前年同月比2.7%増になり日本銀行の物価目標である2%を41カ月連続で上回り、昨年末から今年7月までは3%を上回る状況が8カ月続いている。
今、拡張的な政策が推進されると、インフレを助長してしまう。例えば、インフレ加速の懸念がある中で、日銀にデフレ脱却を確実なものにせよと政府から念押しをされると、金融政策が慎重になって、円安が促されてしまう。これも輸入物価の上昇を誘発してインフレ要因になる。
高市氏は総裁選後の記者会見では物価高対策などへの家計支援策を当面の最優先課題と掲げ、少数与党体制の下で野党との連携強化を狙って、野党が掲げる家計支援策にも積極的に応じる姿勢を示した。
だがこれも財政拡張につながり、今後、インフレ期待がさらに高まる可能性がある。
意図せざる形で物価高が進み、追加的な物価高対策を迫られるという悪循環になりかねない。