2013年6月4日、衆院本会議で可決された生活保護法改正案は、現在、参院で審議されている。

前回に引き続き、今回は、同時に審議されている「子どもの貧困対策法案」との関連を中心に、衆院で行われた審議を振り返ってみたい。

生活保護制度の利用を困難にする改正案と生活保護基準の引き下げは、貧困状況にある子どもたちの生活と将来に、どのような影響を及ぼすだろうか?

ひとり親世帯の貧困率は50%以上
子どもの発達を阻む“貧しさ”

2013年5月31日、衆議院・厚生労働委員会において、生活保護法改正案・生活保護基準引き下げがもたらす問題について述べる朝日健二氏(衆議院インターネットTVよりキャプチャ)

 2013年5月31日、衆議院・厚生労働委員会において、参考人として出席した朝日健二氏(NPO朝日訴訟の会理事)は、

「小学校も中学校も級長をやって、高校にも進学したかったわけです」

 と、自身の経験した貧困の連鎖について語った。

 朝日氏は、1935年に生まれた。実父は戦時中に従軍し、結核に罹患した状態で軍隊から復員した。貧困状態の中で、朝日氏は高校進学を断念し、通信制の高校を辛うじて卒業した。その後、朝日氏自身も結核に罹患したが、生活保護の医療扶助によって療養生活を送り、回復した。回復した朝日氏は、その後、故・朝日茂氏の養子となって、生存権の保障を求める「朝日訴訟」を承継しようと試みたが、最高裁は承継権を認めなかった。その後も朝日氏はさまざまな活動を続け、2005年からは「第二の朝日訴訟」とも呼ばれる「生存権裁判」の原告ともなっている。

 朝日氏は、本年8月から実施される生活保護基準引き下げによる影響が、特に単身者に対して大きいことを取り上げ、

「高校を卒業したら、とにかく、なんでもいいから働けと匂わせているのか?」

 という自身の疑問を表明した。

 また、子育て中の世帯に対しても、今回の生活保護基準引き下げの影響は大きい。このことは、貧困の連鎖へとつながりうる。現在すでに、ひとり親世帯の貧困率は50%以上にも達している(国民生活基礎調査〈2012年〉による)。