「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という言葉がある。
人は、その力量に応じた希望や夢を持つという意味だが、採用面接にも使える言葉だ。
私は、銀行に勤務していた頃、人事部に5年在籍した。担当は、昇格、昇給、賞罰など人事部の中の人事部とよく言っていたが、いわば銀行員の出世を一手に握っており、最も権威、権力がある部署だった。
だから思い通りに部下を昇格させられなかった(私が邪魔したと信じている)部店長などから「籠から出て来た時には、目に物見せてやるからな」と、憎しみの言葉を投げつけられたことが頻繁にあった。籠とは、人事部のことで、要するに人事部にいる間は手が出せないが、別の部署に移ったら、潰してやる、ということだ。
「どうぞ、楽しみにしています」としか言いようがなかったが、憂鬱であったことは確かだ。
採用担当ではなかったが、採用シーズンになると、採用面接は多くこなし、採用を決定したし、昇格などのための面接はもっと多くこなした。
たった数分でその人のことが分かるものか、とののしられながらもその数分の面接で採用を決め、昇格を決めなくてはならないのだ。いったい人事部員である私は、何を見ていたのだろうか。
バイトはストリップの業界記者
就職氷河期は依然として続いている。現在は、採用面接のシーズンだ。私のつたない経験を紹介しつつ、論語とともに考えてみよう。
さて冒頭の「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という言葉だ。これは採用面接を行っているときに実際に感じた感想だ。当時は、リクルーターという若手行員が採用候補者を挙げて来る。それを私は面接し、採用するか否かを決定する権限を与えられていた(当然、採用は、役員面接で最終決定だが、いわゆる内定を出す権限だ)。