ただし、3団体の違いに加えて、自動車メーカーやインポーターの意識・意欲の濃淡が影響していることも指摘したい。今年は、国内自動車市場の約4割を占める軽自動車から2車種、今の乗用車の主流である小型SUVから1車種が選ばれた。

 つまり、2025年を代表するクルマが3車種ある謎は、多種多様ならぬ3車種3様で、選考基準や価値観の多様化などが複雑に入り混じった結果であると考えられる。

 しかし近年は、「選考委員の価値観がズレている」「多様な基準を絞りきれず、ユーザーの購入動機とギャップがある」などと指摘されることも多い。

 実際、イヤーカーを受賞したからといって、消費者に売れるとは限らないケースも多い。そのため自動車メーカーによっては、会長・社長を含む経営層が受賞自体を冷めた目で見ているところもある。

 それでも、2022年には3団体がそろって日産・三菱自共同開発の軽EV「サクラ/eKクロスEV」を選出したレアケースもあることは記しておきたい。

選考委員への「過度な接待攻勢」が
問題視されたことも……

 カーオブザイヤーはJCOTYが古参で、1980年に開始、今年で46回目を迎えた伝統ある賞だ。

 ただし過去には、自動車メーカーやインポーターから選考委員への「過度な接待攻勢」が問題視されたこともある。RJCは、そうした風潮を批判し、対抗する意図もあって組織化された経緯を持つ。

 筆者は10年近くRJC選考委員を務めた経験があり、実はRJC会長に推されたこともあったが、これまで述べてきた通り複雑な内情もあるゆえ退いた。

 最後に、自動車ファンや一般ユーザーに伝えたいことがある。イヤーカーは、その年を代表するクルマの“目安”として受け止めてほしい。本当に欲しいクルマは、自分の目で見て、試乗して見つけるべきだろう。