ポストSAPIX 中学受験の少数精鋭塾大解剖#10Photo by Toshimasa Ota

首都圏における中学受験塾の王者、SAPIX(サピックス)の次を担う中学受験塾はどこなのか。今、難関校志向を売りとする「少数精鋭型」の中学受験塾の人気が高まっている。知られざる少数精鋭塾の神髄を各塾のキーパーソンへの忖度(そんたく)なしのインタビューで明らかにする連載『ポストSAPIX 中学受験の少数精鋭塾大解剖』#10では、筑駒・男女御三家・駒東への合格数が在籍者数の過半数という「Z会エクタス栄光ゼミナール」の責任者と対談。その前・後編のうち後編をお届けする。(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)

システムで動く「四大塾」は“マス”のための塾
テストが目的化し、きめ細かい対応が困難に

>>「前編」はこちら

おおたとしまさ 少子化にもかかわらず、受験者数は微減といわれています。つまり受験率は上がっている。そうなると、昔なら受験しなかったような学力の子たちも塾に入ってくるようになりますよね。エクタス(Z会エクタス栄光ゼミナール)さんには直接の影響は少ないかもしれませんが、栄光ゼミナールさんのようなオールラウンドな塾では、より広いニーズに合った指導が求められていくでしょう。そこで、少数精鋭でターゲットを絞っているエクタスさんは、いわゆる四大塾とどう違うのか、差別化ポイントを教えていただけますか。

大矢展樹・Z会エクタス栄光ゼミナール責任者 実際、私はそちら側にいたのでね(笑)。四大塾は「マスの塾」だと思います。システムで動く塾です。テストのための勉強が必要になり、テストに合わせた学習をすると、本来その子に必要な細やかな対応が難しくなります。うちは人数を絞っているので、この子は算数が得意だから国語を多くさせるといった個別の工夫ができます。臨機応変であることは強みです。

おおた 「テストのための勉強」というのは、「週テスト」がある塾のことですか。

大矢 マスの塾はどこも同じです。私は、栄光に来る前に在籍していた塾で、総合テストを学年全体分つくっていました。そういう塾では上位クラスに優秀な先生がいます。看板の先生がいて、そこに入るために日々のテストが非常に重要になります。それで、手段であるはずの「上位クラスに入ること」が目的化してしまうことがあるわけです。上位の子は時間管理もうまいし頭の回転も良いので短時間でこなせますが、真ん中より下の子は必死にやっても届くか届かないかで、目の前のテストに追われ続ける。私はそうした構造の中でやってきましたが、勉強の本質から外れる面があったのではないかという反省があります。ここでは同じやり方にしたくないと考えて設計しました。

おおた 週テストだけでなく、「マンスリーテスト」や「組み分けテスト」みたいなものでクラスの昇降に支配されるのがダメだということですね。だけど、エクタスさんでは、マンスリーテストのようなものはないんですか。

大矢 あります。ただ、1校舎当たりのクラス数が少ないし、(周りは)他塾ならトップクラスに入れるような友達ばかりだし、仮にクラスが下がったとしても講師は変わりません。だから、クラスの昇降という概念が薄いんですね。

おおた 先生が変わらないのは大きいです。

大矢 小規模であることの強みです。大きい塾はどうしてもシステム化せざるを得ない。データや教材や先生は用意しますが、うちはもっと近い距離感で運営します。

おおた 1クラスのサイズは?

大矢 だいたい13~14人です。

おおた 1クラスしかない校舎も?

大矢 はい。最大で3クラスです。ある一定の層の子どもたちが集まっていて、そのレベルを教えられる先生だけで運営します。少なくとも10年以上の経験が必要だと考えており、そうした先生だけを集めています。

おおた 10年以上の経験ですか。すごいですね。

大矢 うちでは10年でもまだ「駆け出し」という感覚ですね。

おおた 小規模塾とはいっても、経営基盤の小さな塾にはまねができないことのように見えます。

大矢 そうです。グループの基盤があるからこそ実現できています。

おおた エクタスには経営資源を投入してやる価値があると、栄光ゼミナールとして、そしてZ会グループとして考えているということですよね。最難関校の合格実績にはそれだけ価値がある。経営基盤の大きな会社が経営資源を大量に投資して狭いターゲットで成果を上げるという話から、早稲田アカデミーさんのSPICA(スピカ)が思い浮かびました。

大矢 言おうと思いました。

おおた 近いものは感じますか。

大矢 あちらはもっと集約的だと思います。最難関に特化した演習講座のための塾です。

おおた 自前で低学年から育て上げるというよりは、他塾も含めて優秀な子どもたちの合格実績を効率よく集中させるシステムに見えます。

大矢 そこに迷いがない。それがすごいと思います。

おおた エクタスさんは、平日の通常コースがベースにあって、週末にオプション講座がありますね。複雑な詳細は割愛しますが、小6の5月から12月に全8回行われる「筑駒必勝特訓講座」は他塾生も参加可能ですね。1回4時間で8回だから合計32時間で、全国学習塾協会の合格実績ガイドラインの要件も満たす設計になっています。

大矢 はい。でもそんなに多くはありません。