
中学受験を決めた家庭がまず直面する難問が、塾選びだ。通塾なしで中学受験に臨んでも合格はおぼつかない。どの塾もウェブサイトや広告で有名難関校の合格実績を前面に押し出し、比較が難しい。そこで、特集『わが子がぐんぐん伸びる!中高一貫校&塾&小学校』の#7では、首都圏の主要28塾について最新2025年入試の合格実績を大分析。各塾の真の「合格力」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
中学受験ブームの陰で講師不足が深刻化
「2面授業」どころか「3面授業」の塾までも
どの塾にわが子を通わせたらいいのか――。塾選びの指標となるのが、各塾の広告やウェブサイトで強調される難関校の合格実績だろう。しかし、それはいわば「大本営発表」だ。難関校の合格実績を前面に押し出していたとしても、実際には、その塾から平均してどの偏差値帯の学校に合格しているかは、塾によって大きく異なる。
そこで長年にわたり中学受験塾の情報を網羅的に収集し、分析している中学受験カウンセラー、石田達人氏の協力の下、首都圏主要塾の直近2025年入試の合格者データを分析、各塾の生徒1人当たりの合格校の平均偏差値を算出することで、塾の「合格力」ランキングを作成した。
ただし、気を付けてほしいのは、ランキング上位だからといって、全ての子どもに最適な塾とは限らないことだ。より重要なのは、子どもの現時点の学力や志望校、さらには子どもの性格によって、相性の良い塾が変わる点だ。
なお、塾選びにおける最大の指標となる、各塾が公表する合格実績データそれ自体にも注意が必要となる。全国学習塾協会は、合格実績として公表できる生徒の範囲の自主基準を定めているが、順守義務はなく、合格者数のカウントに際して一種の“水増し”を行う塾もある。
また、多くの塾では入試後に、合格校の難易度とは関係なく全ての生徒の全ての合格校をウェブサイトなどで公表するのが通例だが、中には偏差値下位の学校のみを非公表にしている塾がある。生徒や保護者に対するその塾の誠実さを測る上でのポイントといえよう。
本稿でも塾が公表する合格者データを基に分析を行うが、残念ながら現時点で各塾の公表実績以外にその力量を測る指標がないからだ。それでも各塾の合格実績の長期的な推移や塾同士の横比較を見ることで、その塾の勢いや生徒の主力の学力層、特定の学校への強さなど、さまざまな「真の実力」に迫ることができる。
一方で、近年の中学受験ブームによって、規模を拡大する塾は多いが、それにより新たな“落とし穴”が生まれている。
次ページでは、首都圏の中学受験塾の合格校の平均偏差値を求めた「『合格力』ランキング」をはじめ、主要28塾がどの偏差値レベルの中高一貫校にどれだけの合格者を出しているかの割合を算出した「学校偏差値ランク別合格者ウエート」「合格力と塾の規模の相関図」「主な塾の生徒1人当たり合格校数」など、塾選びにきっと役立つ五つの図表と分析を一挙掲載する。