パナソニック 正念場#1511月17日、会見に臨むYKK APの堀秀充会長(左)とパナソニック ハウジングソリューションズの山田昌司社長 Photo:kyodonews

構造改革中のパナソニック ホールディングス(HD)が、住宅設備事業をYKKに売却する。住宅設備を手掛けるパナソニック ハウジングソリューションズはHD直轄でグループの柱の一つだったが、HD経営陣の期待に応えることはできなかった。特集『パナソニック 正念場』の#15では、パナソニックHDが住宅設備事業を成長させられなかった根本原因を探る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

「家まるごとパナソニック」戦略は崩壊
住宅設備事業を自力では育てられず

 今年11月17日、パナソニック ホールディングス(HD)は住宅設備事業のYKKへの売却を発表した。昨年11月にパナソニックHDの楠見雄規社長自らYKKに譲渡を打診したという。

 2025年度末に住宅設備を手掛けるパナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)の株式の8割をYKKに売却し、残り2割は引き続きパナソニックHDが保有する。YKKの100%子会社として中間持ち株会社を設立し、27年度をめどに、その傘下に住宅設備子会社のYKK APとPHSが入る体制を構築する予定だ。

 楠見社長はこの売却について、今年12月2日に開かれたパナソニックグループのIRイベントの中で、「PHSのみならずYKK APにとってもいい座組みになる」と語った。

 確かに、窓やサッシなど建物の「外」に強いYKK APと、水回り設備や床材など「内」に強いPHSのタッグが相互補完的であるのは間違いない。しかし、パナソニックHDがPHS株式を8割手放すことからも、住宅設備事業がパナソニックHDにとって「お荷物」だったのは確実だ。PHS社員は「当社の収益性は、パナソニックグループ各社と比べて大きく見劣りするレベルではないが、成長性がないと見なされてしまったのだろう」と肩を落とす。

 11月17日の会見では、満面の笑みを浮かべるYKK APの堀秀充会長とは対照的に、PHSの山田昌司社長の表情は硬かった。

 旧松下電工の流れをくむPHSは、パナソニックが22年に持ち株会社制に移行した際にHD直轄の会社となり、グループの柱の一つとなった。同じく旧松下電工系で、HD傘下の事業会社パナソニックの分社となったパナソニック エレクトリックワークス(EW)社とは対照的だ(EW社については、本特集の#14『パナソニックで“傍流”の電気設備事業が東芝、三菱電機に圧勝!蛍光灯「製造禁止」でも1兆円荒稼ぎ』参照)。

 結果的に、PHSはHDの経営陣の期待に応えることはできず、グループから切り離されることとなった。グループの成長をけん引する役割を期待されたPHSは、いったいなぜ売却されることになったのか。パナソニックグループ全体の事業戦略に「致命的な欠陥」があったようだ。

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