まだ可能性に言及したに過ぎないが――。
FRBの「出口」の意味とインパクト
日経平均で前日比1100円を超えた5月23日の日本株急落から、世界の市場が不安定だ。背景には、FRB(米国中央準備制度理事会)が現在の大規模な金融緩和のペースを近い将来落とす可能性が現実味を帯びてきたこと、いわゆる金融緩和の「出口」が近づいてきたことに対する市場の警戒感がある。
一般に、株価をはじめとする資産価格にとって、中央銀行による金融引き締めは、抵抗しても結局は勝つことができない「最大の敵」だ。典型的な金融引き締め行動は中央銀行が誘導する政策金利の引き上げだが、1回目、2回目ではないことが多いとしても、何度か政策金利が引き上げられるうちには、株価や不動産価格は天井を付けて下落に転じるのが普通だ。
現在のFRBは、短期金利をほぼゼロまで引き下げた上での「量的緩和」政策の規模を、近い将来縮小する可能性に言及したという段階だ。現在、実際に緩和を縮小し始めたわけでもないし、それを行う時期を明言したわけでもない。
とはいえ、FRBの金融緩和が縮小に転じ、将来は政策金利の引き上げもあり得るとすると、米国の金融市場はもちろん、米国以外の国の金融市場にも与える影響は小さくないだろう。
将来、投資家に対して米ドル建てで支払いをしなければならないという資金は、米国内にも米国の外にも多々あるし、米ドルで投資に使う資金を調達している投資家(ヘッジファンドなども含む)は少なくない。米ドルの実質金利が上昇するということは、こうした投資家の資金のいわば「元値」が変わるということなのだから、米国内の資産価格も、米国外の資産価格も影響を受ける公算が大きい。
ただし、今論じられている「出口」は、遠からず金融緩和の規模を縮小し始めるというレベルの話であって、金融引き締めに転じるというところまでは小さくない距離がある。