現代のクルマは、もう自動車メーカーだけでは作れない
山:ガソリンの時代には、ウチなんかは本当に「エンジンのホンダ」と言われていたんですよ。エンジンなら全部自分たちでできた。エンジンなら自分たちで多種多様な技術を持っていた。それが今やどんどん……ADAS(先進運転支援システム)もそうだし、AIもそうですが、もはや自分たちだけではどうにもできない領域に入ってしまった。
よそと組まなければ、あるいはよそから買ってこなければ、どうにもならない時代になっているんです。重要な技術を買ってくるとなると、どうしてもそこは交渉の世界になる。そこにはパワーバランスという厄介な壁が立ちはだかる。これはウチだけの問題ではありません。他社さんも同じ状況です。
F:うーむ……。
山:もちろん我々も手をこまねいているわけではありません。コストダウンのためには知恵を絞りに絞っています。しかしそれにも限界がある。
EV、自動運転……中国の技術力は、もはや先生レベル
山:あとは中国です。中国の技術。
F:中国ですか。良くなっている?
山:良いですよ。強いです。先進技術もそうですし、デザインもそう。
F:世界中から優れたエンジニアやデザイナーをヘッドハンティングしまくっていますからね。もはやバカにできないレベルになっている。
山:バカにするどころか、ある分野に関しては、もう先生になってもおかしくないレベルに達しています。ものすごい勢いで進化している。NOA、ナビゲーション・オン・オートパイロット(Navigation on Autopilot、自動運転技術の一つ)の略でNOAと言いますが、中国のあの大渋滞の中を、クルマが人をひょいひょい器用によけながら走っているんですよ。目を見張る技術です。本当にアグレッシブです。
中国はガソリンエンジンの時代には歯が立たなかったから、その間にじっとEVと先進技術の蓄積を、国を挙げてやってきた。いまになってそれが花開いたという印象です。欧州を見ていると、「ともかく中国と仲良くやっていこう」という社会になっているように感じます。いずれにしても、日本のOEM(自動車メーカー)の置かれている環境は非常に厳しいです。
2021年、世界初の自動運転レベル3搭載量産車としてホンダが発売した「LEGEND」。2022年に販売終了した(広報写真)







