政策金利引き上げで高まる
債券の含み損の拡大圧力

 図表2では、株式・債券・その他の内訳別の含み損益を表示した。一覧すればすぐに分かるとおり、株式はほぼ黒字、それに対し債券はほぼ赤字となっている。

 債券には、国が発行する国債、県や市などが発行する地方債、事業者などが発行する社債が含まれる。株式や不動産同様に、さまざまな要因によって時価が変動し続ける。代表的な変動要因には信用不安が挙げられ、税収や売り上げなどが伸び悩んだことで元利金が支払われなくなって被害を受ける危険を信用リスクと呼ぶ。

 それ以外の変動要因には、金利が挙げられる。債券に投資する投資家は、金融財産として債券を選択・投資するため。少しでも高い金利の債券を選ぶ力が働く。一方、債券を発行して資金を調達する発行体側には、金利負担を軽減するべく少しでも低い金利で発行しようとする力が働く。従って、債券の発行利率は、発行時の金利動向にも左右される。

 期間10年の市場における金利が年1%だった時点で、期間10年利率年2%の固定金利で発行した債券が、発行直後に期間10年の市場金利が年2%に上昇した例をもとに、ごく簡単に説明したい。債券金利の2%と市場金利の1%の差の1ポイント分は、元利金が償還されない信用リスク(「リスク・プレミアム」と呼ばれる)分と考えられる。

 投資後に金利が上昇して2%になれば、「無事に元利金が支払われないかも知れない」という危険を冒さなくとも、市場取引だけで2%が受け取れることになる。よって投資家にとっては、発行済みの債券の魅力が下がるため、時価も下落する。

 それとは逆に、発行直後に市場金利が低下して期間10年の金利が年0%になれば、「無事に償還されない(可能性)」という危険は同一ながら、受け取れるポイントのうまみが相対的に高まる。発行時と同一のリスク・プレミアムならば、金利低下後の債券の利率は年1%になるからだ。それゆえに、2%と0%の差の2ポイント分が受け取れるだけ発行済み債券の価値が高まるため、時価も上昇する。

 つまるところ、金利と固定金利型債券の時価は、金利が上昇すれば時価が下落する逆相関の関係にある。24年3月の日本銀行(日銀)のマイナス金利政策解除・金融政策正常化つまり金利の引き上げは、地銀・第二地銀の保有する債券の時価を大きく引き下げる効果をもたらしたことに他ならない。

 地銀・第二地銀が債券に含み損を抱える理由は、債券に投資を行っているからだ。この背景には、投資に伴う負担がある。