25年9月期の預金+譲渡性預金の残高が2502億2600万円と最も少ない佐賀共栄銀行の「預金+譲渡性預金-貸出金」の差額は、単純計算で525億6400万円に達する。それだけの規模の余裕資金が常時変動し続ける中で、金融市場で運用するだけでも、金融実務上かなりの負担が強いられる。時間に対する価格の変動幅(「ボラティリティ」と呼ばれる)が相対的に大きい株式などへの投資は、投資・保有後の市場動向を注視する対応がいや応なしに求められるが、そこまで人手を割ける銀行ばかりではない。

 このため多くの銀行で、相対的にボラティリティの低い債券を中心に投資し、株式などの投資の割合を一定以下に抑える投資方針が選択されている。実務上では、毎月定額の債券を購入し続ける「ラダー(はしご)買い」と呼ばれる手法を選択する銀行が少なくない。この結果残高が積み上がった債券が、金利上昇によって時価を引き下げた事態が見込まれる。

 日本銀行の12月19日の金融政策決定会合で、来年1月に政策金利の0.25%の引き上げが決定された。30年ぶりの金利水準に、当日の市場は早速反応し、長期金利が2%を超えた。結果として、地銀・第二地銀が保有する債券の含み損をさらに拡大させる圧力となろう。

八十二銀は1200億円以上含み益を減らすも
なお2位の含み益

 図表2では、24年9月期との含み損益の差額を機械的に算出し、減らした順に順位を記載した。それらを含め、個別の特徴的な動向に触れたい。

 最も大きな含み損を抱えているのは島根県の山陰合同銀行であり、-1118億円と他行より1桁多くなった。債券の-806億円に加え、投資信託や外国証券を区分するその他も-652億円となった。

 2位は山口フィナンシャルグループ傘下のもみじ銀行で、金額は-328億3600万円となった。同グループ傘下の山口銀行の74億2700万円、北九州銀行の86億5800万円を単純合算しても含み損が解消されないため、悩みが深いことだろう。

 24年9月期から含み損を最も減らしたのは、95位の八十二銀行で、1224億円減らした。1年間に有価証券残高を1341億900万円、比率にして3.90%減少させているため、含み損の大きな債券などを売却した対応が見込まれる。それでもなお、含み益順で2位につけているため、余裕があったため損失を出して処理した事態を推察する。

 含み益が最も大きかったのは京都銀行で、1兆円を超えた。さらに、24年9月以降の1年間に2269億900万円含み益を増やしており、この金額も地銀・第二地銀中1位となる。含み益の大部分を株式が占めているため、好調な株価がもたらした影響が大きかった模様だ。

(オペレーショナル・デザイン(株)取締役デザイナー/データアナリスト〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)