三菱自動車が経営再建の総仕上げに入っている。復配にめどをつけた次の課題は優先株の処理である。来年6月のXデーに向けて、三菱御三家による水面下の交渉が始まっている。
集中治療室から一般病棟へ移る準備が着々と進んでいる。三菱自動車の再建がヤマ場を迎えているのだ。
6月25日に開催される定時株主総会にかける議案が発表された。その柱は、資本金と資本準備金を取り崩して単体累積損失9246億円を解消したり、優先株(詳細は後述)から普通株への転換に備えて株式発行枠を実質的に拡大したりする、というもの。
三菱自動車にとって、「(普通株の)復配」と「優先株の処理」という二大課題は経営再建の最低条件だった。累損の解消により、1998年3月期以来途絶えていた「配当復活」が見えてきた。今後、優先株処理へと問題は移る。
三菱自動車は2000年のリコール(回収・無償修理)隠し問題をきっかけに経営危機に陥った。当時パートナーであった独ダイムラー・クライスラーに支援を打ち切られたことから、04年から06年にかけて、三菱御三家(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)を中心とした三菱グループらが総額約6000億円もの優先株を引き受けた。優先株とは、議決権がない代わりに配当や残余財産の分配において、普通株よりも優先的に受け取ることができる株式のことをいう。
再建スキームが構築された当時、優先株には5%配当の取り決めがあった。だが、実際には、「リーマンショック前に累損を抱え再建途上にあったことから(図(1))、一度も優先株への配当金は支払われていない」(黒井義博・三菱自動車常務執行役員。三菱商事出身)。それほどまでに不利な条件であっても、三菱グループは総力を結集して、三菱自動車を再生へ導くことに心血を注いだのだ。