調査の過程で見つかったファイルのタイトルには、こう記されていました。
「2023年6月28日付覚書(監査には絶対に見せない)」
この覚書には、何が記されていたのか。なぜ、彼らはここまで露骨な隠蔽工作をしてまで、数字を作らなければならなかったのでしょうか。
AFS社で行われていた会計不正の詳細を見ていきましょう。
無関係のはずの会社が実は子会社?
ホテル売却益のカラクリ
まず、今回発覚した不正の中でも特に大胆だったのが、2022年に行われた「ホテル事業の売却」にまつわる手口です。
AFS社は2017年に山口県にあるホテルを取得し、ホテル事業に参入しました。しかし、業績は芳しくなく、2022年にこのホテルを売却しました。
帳簿上は、この売却によって多額の利益が出たことになっています。経営が苦しい会社にとって、まとまった売却益はまさに干天の慈雨でした。
しかし、この売却相手であった「R社」という会社。一見すると無関係の第三者のように見えましたが、その実態は驚くべきものでした。
なんと、AFS社の会長が個人的にR社の設立資金を貸し付けていたのです。さらに、R社がホテルを買うために金融機関から借りた2億円について、会長個人が連帯保証人になっていました。
これだけではありません。会長とR社の間には、「株主間契約」という秘密の取り決めまで交わされていました。
その内容は、「R社の取締役の過半数を会長が指名できる」「重要な決定には会長の承諾が必要」というもの。つまり、R社は形こそ別の会社ですが、会長の支配下にあるため、実質的には子会社だったのです。
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会計の世界には、「連結会計」というルールがあります。
親会社と子会社の間で商品を売買しても、それは「家族の中で財布を移動させただけ」とみなされ、連結財務諸表上は利益として認められません。
今回の場合、実質的な支配関係があるR社への売却は、まさに「右のポケットから左のポケットにホテルを移しただけ」の行為です。本来なら消去されるべき売却益を、あたかも正当な商売でもうけたかのように見せかけていたのです。







