新監査法人を専任→お断りします
上場廃止のウラで前代未聞の辞退劇

 こうした不正の温床となった背景には、企業を見張る番人である「監査法人」との歪な関係もありました。
通常、上場企業が監査法人をコロコロ変えることはありません。しかし、AFS社は上場以来、5度も交代を繰り返していました。これは異常な頻度です。

 内部監査部門がわずか1名体制(23年9月期および24年9月期の監査時点)だったこともあり、深度ある監査が困難な状態が続いていたことが後に明らかになっています。

会計事件簿筆者作成
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 監査法人が変わる理由はさまざまですが、短期間での変更が続く場合、多くは「会社側が監査法人の厳しい指摘を嫌がった」か「監査法人がリスクを感じて離れた」かのどちらかです。

 そして極めつけは、2025年の出来事です。

 AFS社は新しい監査法人として「監査法人やまぶき」を選任することを発表しました。しかし、その直後になんと監査法人側から、「就任を辞退する」という申し出があったのです。

 これは、監査業界でも極めて異例の事態です。おそらく、引き継ぎの過程で「これはあまりにも危険だ」「隠されている爆弾が多すぎる」と判断されたのでしょう。

 この「監査法人からの三行半(みくだりはん)」いわば「あなたとはやっていけません」という絶縁宣言こそが、AFS社の終わりの始まりでした。

 結果として、半期報告書を提出することができず、上場廃止への道を転がり落ちていくことになります。

 一度うそをつくと、そのうそを隠すためにさらなるうそが必要になる。まるで麻薬のように、不正から抜け出せなくなっていく――これが粉飾決算の恐ろしさです。