地方銀行は今、経営環境の急速な悪化に直面している。「地銀の雄」と称される横浜銀行(神奈川県)を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループは、今年から新たな中期経営計画を始動したが、背景には低い利益率に対する圧倒的な課題が存在すると川村健一社長は吐露した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)
――今年4月からの新中期経営計画において、「コアビジネスの深化」という題目で企業支援を基本方針に掲げました。その一方で、地方では人口減少や企業の廃業が進み、地方銀行がどう融資事業を伸ばしていくかが大きな課題とされています。その中で掲げた今回の基本方針には、どのような思いがあるのでしょう。
私たちのグループの傘下にあるのは横浜銀行と東日本銀行であり、(マーケットは)神奈川県と東京都ですから、まださほど深刻には思っていません。今後もそこまで深刻にはならないとみています。そういう意味で、他の地銀とは取り組み方が少し違うかなと思いますけれど、このままいくと、本当の地方は難しいですね。
折しも、250億円問題とも500億円問題ともいわれる(銀行の東京証券取引所第1部の上場維持)問題があり、非上場化するのではといった話も出ています。だいぶ前の話ですが、ある政府関係者と議論する中で、銀行は地域企業のサポートのためにもっと人を増やさないといけないというテーマが出たことがあります。
確かに、銀行員一人が担当できる会社数には限度があり、人数を増やせば事業性評価といったかたちでもっときめ細かく支援できますが、これはコスト増になります。それなら、コストをかければいいだろうと意見をもらい、株式会社だから一定の利益を上げる必要があると返したら、株式会社だからいけないのではないか、という話になってしまったんですね。
ですから、地域に必要な最低限の部分を支える機能として捉えるのであれば、上場した民間企業ではなくて、それこそ政府系金融機関の地方版をつくっていくというように思い切って発想を転換しないと、難しいかもしれません。
その議論のときは、「私たちは関東圏におり、日本のこの地域で銀行業が成り立たなければ、それは日本の恥です」と返してその場は乗り切りました。ですが私たちにも(他の地銀と)似たところはあり、上がってくるビジネスとしての利益自体はどんどん薄っぺらなものになっています。そういう面で、(銀行が)成立しなくなってきているわけです。
今回の中計全般の大本は、去年(2018年)の夏から1年近くかけて議論してきました。やはりROE(自己資本利益率)のレベルがこれでは話になりません。当社の一部の社外取締役から、「ROEばかりや株主還元ばかりでは駄目なんだ」という意見も山ほど出ました。ただ、議論する中で、「じゃあ今の株価はPBR(株価純資産倍率)として大丈夫だと思いますか?」という話に戻ったんですね。
その議論をしていた夏場はROEが7%くらいで、その後4%まで下がりもっと深刻な課題になっています。ではどうすればいいかといえば、やはり資本コスト並みの利益を上げることが絶対に必要という話がようやく共通点になりました。