「面接ラッシュ」が教えてくれた
想定外の自分とスキルの磨き方

 妻の体調が落ち着き、Aさんは仕事復帰への一歩を踏み出しました。

 30代半ばのAさんはこれまで7社を経験。転職回数が多いうえに直近で半年間のブランクがあることから、「自分を選んでくれる会社があるのだろうか」という不安を抱えながらの再始動でした。

 しかしふたを開けてみれば、転職市場の反応は予想を大きく裏切るものでした。応募した25社のうち、なんと7社もの面接が同時進行することになってしまったのです。

 Aさんがこれまで経験した7社での幅広い経験から得た強みを言語化し、企業ごとにアピールを使い分けたことが功を奏したのか、「条件を絞りすぎず、自分に合う環境を広く探そう」という柔軟なスタンスが良かったのか、転職活動は順調すぎてうれしい悲鳴を上げるほどの忙しさ。

 何しろ、3週間で10件近い面接をこなす日々です。平日はほぼ毎日、どこかの企業の面接がある状況でした。

 正直に言えば、完璧な企業研究や面接準備などが間に合わなかった場面もありました。

 しかし、この「打席に立ち続ける」経験が、Aさんを劇的に変えました。

 用意された回答をなぞるのではなく、その場の空気を感じ取り、自分の言葉で思いを伝える「アドリブ力」。連日の面接を通じて、Aさんは自分の強みがどこにあり、市場から何が求められているのかを、肌感覚でつかんでいったのです。

 不器用でも必死に言葉を紡ぐ中で、Aさんの言葉には、机上の空論ではない「経験に裏打ちされた説得力」が宿っていきました。

今の自分に何ができるかよりも
これからどう成長していきたいか

 激動の選考期間を経て、Aさんが手にしたのは、活動当初は想像もしていなかった「未経験職種」である人事・総務の仕事への内定でした。

 しかもその企業には、中長期的に人を育てる土壌がありました。かつて、教育体制が崩壊した環境で苦しんだAさんにとって、その安心できる環境は何物にも代え難いギフトでした。

「今の自分に何ができるか」ではなく、「これからどう会社に貢献し、どう成長していきたいか」