日本で広まる「ベストオーナー論」の限界Photo:PIXTA

2009年に始まった「ベストオーナー」論
日本では10年遅れて広まる

 2010年代以降、世界の経済論壇で「ベストオーナー」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。

 この言葉を世界的に定着させたのは、戦略コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーだろう。2009年にMcKinsey Quarterly に掲載された“Are you still the best owner of your assets?”(あなたは今でも自分の資産を最も適切に管理できるベストオーナーと言えるでしょうか?)が発端と言える。

 著者たちは、各企業自らが、自社が保有する事業の「ベストオーナー」かどうかを絶えず問い直すべきだと主張した。自社の保有事業について、より高い価値を生み出せる企業があれば、その事業をより相応しいオーナーに譲るべきだと著者たちは言う。

 日本では、10年遅れの2020年代に入ってベストオーナー論が広まった。2020年、経済産業省は「事業再編実務指針」にて、事業ポートフォリオ再編では「自社がその事業のベストオーナーか」が最も重要な視点であると明示した。

 しかし本稿では、ベストオーナー論の問題を4つの視点から論じたい。