巨額の“塩漬け”土地を抱えたまま処理が遅々として進まない全国の土地開発公社。国も腰を上げ、債務解消を図るための特例を設けて対応に乗り出すが、はたして問題は解決するのだろうか。
「土地開発公社が行政改革の本丸。これを解決すれば、将来が見えてきます」
こう語るのは、神奈川県南足柄市の加藤孝之企画部長だ。全国でも指折りの富裕自治体だったが、大規模な工場が規模を縮小したことに伴い税収が大幅にダウン、地方交付税の交付団体になっている。
そんな南足柄市が目下、全力を挙げて取り組んでいるのが、土地開発公社の解散だ。
土地開発公社とは、公共事業用地を自治体に代わって先行取得する外郭団体のこと。自治体の依頼に基づき、金融機関からの借入金(自治体が債務保証)で土地を取得。事業化の段階で自治体が土地を買い取り、公社はその代金を借入金の返済に充てる仕組みとなっている。
ところが、南足柄市の場合は違った。公社が保有する土地の8割を市が買い取ることなく、ちゃっかり利用していたのである。
市の担当者は「施設建設などを優先し、土地の買い取りにカネが回らなかった」と説明するが、代金が入ってこないのだから公社の経営は青息吐息。揚げ句、約12万平方メートル、額にして65億5100万円の土地が10年以上の長期保有になっている。
市は2010年から重い腰を上げ、毎年2億7000万円分の土地を買い取り始めたが、公社の借入金はすでにかなりの利息が発生しており、保有残高はなかなか減らない。
そこで市は、「第三セクター等改革推進債(三セク債)」の発行を決断する。これは、公社の解散を条件とし、三セク債を発行することで公社の借入金を自治体本体が肩代わり(代位弁済)することを国が特例的に認めたもの。行政関係者の間では「たたみ債」と呼ばれている代物だ(図参照)。
借入金の償還が9月に迫っているため、約61億円の三セク債を発行し、公社の債務を償還できるように手続きを進めているのだ。