アメリカの投資信託は1934年設定で
今でも人気がある商品も健在

 しかし、日本では不幸な生い立ちの投資信託でも、基本的な商品性自体は、とても優れたものです。

 大勢の個人から少しずつ資金を集めて、その資金で世界中のさまざまな資産に分散投資するという仕組みは、個人が長期的な資産形成をするには、非常に適しています。

 また日本では「危ない」イメージがつきまといがちな投資信託ですが、投資の先進国であるアメリカでは、投資信託といえば「長期投資」です。

 例えば約80年前の1934年に設定された『アメリカン・ファンズ・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ」(ICAファンド)という株式ファンドがあります。戦争や大不況、多くの金融危機などを乗り越え、設定以来、なんと79年間で平均利回り(複利)は12.05%。最初に1万円預けていれば、現在は8008万円になっている計算です。

 この投資信託は、今も資産残高が4.6兆円近くあるメガファンドで、アメリカの純資産残高ランキングのベストテンにも入っています。これこそ、長期投資の王道だと思いませんか?

日本には資産作りに適した
よい投資信託がほとんどない!

 私は1987年に社会に出てから、20年以上、資金運用の仕事に携わり、機関投資家としてさまざまな商品が設計され、販売されているのを見てきました。

 日本の投資信託は、今に至るも、なかなか個人の資産形成に貢献できる商品には少ないというのが、私の正直な感想です。

 今回の著書で、私は長期投資のプロとして、この先行きが不安な時代、なんとか資産を作りたいと思っている人に、お勧めの投資信託を選んでみようと思いました。

 公平な視点で、現在、設定・運用されている投資信託から長期投資にふさわしい条件を当てはめてみたのです。

 すると、驚くべきことに、そのスクリーニングによって長期投資に適していると思われるファンドは、今現在、存在している3376本の中で、たったの9本しかありませんでした。

 お勧めできる投資信託がたった9本。これだけでも、いかに日本の投資信託業界の現状が、お粗末であるかが分かろうというものです。しかし、逆説的に考えれば、たった9本なのであれば、選ぶのもきっと簡単です。

 投資信託は「長期投資」に向いたものを「自分で」選べば、必ず大きな資産をつくることができる優れた商品です。

 何も知識がなく、金融機関の窓口に行ってしまうと、彼らは販売のプロであって、投資信託を運用しているプロではありません。ですから、あなたの資産運用にとって有利な商品を進めてくるとは限らないのです。

 販売のプロである金融機関の販売担当者は、どうしても長期投資向きではない、自分たちの「売りやすい商品」や、その時期の「販売目標にある商品」を勧めてくるケースが多いのです。

何も知識がないまま、金融機関へ行って、窓口のお勧めを買うことだけは、絶対にやってはいけません。

次回は7/31更新です。

中野晴啓(なかの はるひろ) 
セゾン投信株式会社 代表取締役社長。公益財団法人セゾン文化財団理事、NPO法人「元気な日本を作る会」理事。1963年東京生まれ。1987年明治大学商学部卒、クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、(株)クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代中心に直接販売を行っている。また、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。『運用のプロが教える草食系投資』(共著・日本経済新聞出版社)、『20代のうちにこそ始めたいお金のこと』(すばる舎)、『30歳からはじめる お金の育て方入門』(共著、同文館出版)、『年収500万円からはじめる投資信託入門』(ビジネス社)ほか多数。

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