総予測2026

トランプ関税ショックから一転、米国株は2025年初から10%以上上昇して推移している。楽観ムードが漂う一方、AIブームの賞味期限や割高な株価指標など懸念材料は少なくないが、25年に続き2026年も高値更新となるのか。特集『総予測2026』の本稿では、野村證券の北岡智哉チーフ・エクイティ・ストラテジストに26年の米国株の見通しや投資戦略について聞いた。(構成/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

26年、27年共に2桁増益見込み
深刻な景気後退に陥るリスクは低い

 2026年末のS&P500は7200ポイントをメインシナリオとしている。AI革命が生産性を改善し、企業収益に本格的にプラスの影響をもたらす場合は7500ポイントを超える水準まで上昇する可能性がある。

 上昇をけん引するのはEPS(1株当たり純利益)の成長だ。12カ月先予想EPSは25年に続き、26年、さらには27年も前年比10%以上の伸びが見込まれている。

北岡智哉 野村證券チーフ・エクイティ・ストラテジストきたおか・ともちか/野村證券入社後、金融経済研究所にて株式ストラテジストとして投資戦略のリサーチに従事。内外の証券会社、経済産業省などを経て、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングCIOマネジメント部で機動的資産配分(TAA)を担当。2024年4月より現職。

 足元のS&P500のPER(株価収益率)は23倍程度で過去の平均と比較すると割高な水準であることは事実である。だが、米国株の場合、毎年1.2兆ドル程度の自社株買いも実施されている。時価総額が75兆ドル程度なので、毎年1~1.5%減少していく。需給を加味した上で株価は形成されていると考えていいのではないか。

 また、足元の米国経済は民間部門の債務、在庫、設備投資について過剰とはいえず、人も余っていない。景気後退に陥るリスクについては低いと考えている。

 一方、AIによる自動化が浸透する局面では、「景気は強いが雇用が下振れる」という場面があり得る。FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを実施して雇用に配慮する確率が高まることで、結果的に景気全体に対して必要以上の上振れをもたらすという側面もある。AIブームと利下げの“いいとこ取り”は上振れシナリオの一つだろう。

次ページでは26年の米国株の投資戦略を具体的に解説。AI相場をけん引してきた大手IT7社(マグニフィセント・セブン)の「次」の投資アイディアや、警戒度を高める必要があるリスクシナリオについても紹介する。