右派勢力が男系男子による皇位継承にこだわる理由、高市政権の周到さなき皇室典範改正議論の行方皇族数確保に関する与野党代表者らとの全体会議後、記者団の取材に応じる衆院議長の森英介(中央右)、参院議長の関口昌一(同左)ら Photo:JIJI

「立法府の総意」と「静謐な環境」という二つのキーワードが消えてしまった。「皇族数を確保」することを目的に始まった皇室典範の改正を巡る議論のことだ。結果、会期末が迫る国会審議の中で他の法案を巻き込む「台風の目」となっている。議論の出発点は減少が続く皇族の人数をどうすれば維持できるかにあった。現状は次の世代を担う40代以下の皇族は6人のみ。このうち女性皇族は5人。現行の皇室典範では女性皇族は婚姻すれば皇籍を離脱するため、菅義偉内閣で設置された通称「安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議」(座長・清家篤・元慶應義塾長)で検討が始まった。

 そのベースとなったのが2016年8月、平成の天皇陛下(現上皇陛下)の退位表明から始まった退位特例法の制定過程といっていい。当時の首相は安倍晋三。元首相の野田佳彦は不慮の死を遂げた安倍の追悼演説の中で安倍との極秘会談のやりとりを明らかにした。

「政争の具にしてはならない。国論を二分することがないよう、立法府の総意をつくるべきだ」

 皇族の身分、とりわけ天皇の地位に関する問題についての価値観、皇室観は政党間だけでなく個々の議員の間でも千差万別。このため何よりも冷静な議論が必要とされる。それが「静謐な環境」であり、「立法府の総意」だった。退位特例法をまとめ上げた当時の衆院議長、大島理森は丁寧な与野党協議と党派を超えた調整を繰り返した。