ひとつの職業に長く就いていると、定期的に異業種交流会等に参加でもしない限り、どうしても他業界の動向を知る機会は少なくなってしまう。また、他社の風土やノウハウといったものは、身をもって体験しないとわからない側面もある。

 異質な仕事世界を垣間見ることで、組織全体の考え方が柔軟にもなる。自社に小さなイノベーションを起こしたい――そんな思惑が企業側にはあるようだ。

セカンドキャリアのヒントを探す人もいる

 実際に研修として職業体験ツアーの活用を考えている企業担当者に聞くと、「商品開発のヒントにしたい」「異業種の刺激により発想を豊かにしたい」「懸命に働く他社の空気を吸うことでモチベーションを高めたい」…などの動機が多い。

「セカンドキャリアを考えるシニア層に向けての需要もあります」(田中氏)

 第2の人生が“余生”ではなくなりつつある昨今、定年後のキャリアデザインをどう描くかは、個人にとっても企業にとっても重要な課題である。社員の在籍時から、労務のソリューションとして職業体験を取り込んでいく――という動きが拡大していくのは自然なことだろう。

 こういったニーズの広がりを受け、仕事旅行社では、研修だけでなく福利厚生のイベントとして参加できるツアーも構想中だ。

 飲み会、運動会等のレクリエーションの一環として、職場ぐるみで異業種の世界を体験してみる。単なる交流を超えた成果を期待できる“大人の職業体験”は、これから加速していきそうな気配である。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)