7月21日に行われた参院選は65議席を獲得した自民党の圧勝に終わった。8月1日からは生活保護基準の引き下げが実施される。しかし、政情がどのように動こうが、生活保護当事者たちは生存と生活を続けるしかない。
今回は、重度障害のため生活保護以外の選択肢がない1人の女性の日常・これまで・将来への思いを紹介する。生活保護政策の変化は、生活保護基準の引き下げは、どのような人に、どのような影響を与えるのであろうか?
NPOで活動しながら生活保護を利用
ある重度障害者の日常
東京都・多摩地区に住む須釜直美さん(45歳)は、22歳の時から生活保護を利用している。
生まれつきの骨形成不全症を持つ須釜さんは、全身の3ヵ所を骨折して生まれてきた。母親に虐待を受けて育ち、義務教育を充分に受けることもできなかった須釜さんが、実家でも施設でもなく地域で生きていく手段は、生活保護以外にはなかった。
骨形成不全症には多様なタイプがある。須釜さんの場合は、骨が極めて脆い状態が続いている。乳児期には、「寝返りを試みた」程度のことでも骨折したそうだ。現在も、最も弱い肋骨は、クシャミやセキといった小さな衝撃で骨折することがある。しかも、骨折してもX線写真に骨が明確に映らない。骨折箇所を特定できないため治療が開始されず、自然治癒を待つしかないこともある。歩行など骨に負荷のかかる運動は、生まれつき不可能なままだった。充分な硬さにならない骨は、充分な長さや太さになることもない。須釜さんの身長は、現在85cm程度だ。
しかし須釜さんは、いつも、贅沢ではないがエレガントな衣服に身を包み、スワロフスキー・ビーズでデコレーションした電動車椅子に乗って、あちこちに出現する。須釜さんを見かけるたびに、筆者は「障害者だからといって存分に『女子』をしないのは怠慢かも」と、自分の構わない身なりを反省している。
現在、須釜さんの活動の中心となっているのは、2010年にできたNPO「さんきゅうハウス」での活動だ。そのNPOの主要な活動は、ホームレス状態・貧困状態にある人々への入浴サービス・食事を提供し、生活保護の申請が必要ならば同行し、その後も生活全般・健康などに関する相談に乗ることだ。須釜さんは、「さんきゅうハウス」で、相談員として活動している。とはいえ、そのNPOには、須釜さんに賃金を支払うほどの余裕はない。
6畳・4畳半・3畳の台所という、車椅子生活に対してはギリギリの広さの自宅アパートでも、須釜さんは多忙だ。須釜さんは週に5日、1ヵ月あたりでは270時間のヘルパー派遣を受け、家事・身体介助(主に入浴)などの支援を得ている。健康に問題のない時期ならば、生活を成り立たせることが何とか可能な時間数だ。しかし、骨折などのトラブルにより、「寝たきり」の時期が数ヵ月続くこともある。そういう時には、「寝たきり」の状態で痛みに耐えながら、必要な24時間介護を得るために、電話で行政と交渉を行わなくてはならないこともある。