M&A仲介会社に紹介された
“ルシアンホールディングス”

 M&A仲介会社は企業同士の会社の売買を仲介している。会社を売りたい「売り手企業」と会社を買いたい「買い手企業」の間で、売り手企業の株式の譲渡価格や条件などの交渉を取りまとめ、法的な手続きもサポートする。

 中小企業の後継者不足を解消する手段としてM&Aが有効だと叫ばれ始めた2010年ごろから急増した、比較的新しい業態だ。

 取引の多くは、数千万円から10億円以内のごく小さなM&A。もちろん、新聞紙上で取り上げられることもほとんどない。

 M&Aが成立したら、M&A仲介会社は成功報酬として、売り手企業と買い手企業の双方から仲介手数料を得る“両手取引”が多い。

 向笠社長が城北信金から紹介されたジャパンM&Aソリューションは、2019年11月に設立され、わずか4年で東京証券取引所グロース市場に上場を果たした新興のM&A仲介会社。業界内では、株式譲渡価格が1億円に満たないような、小さな規模のM&Aを手がけることで知られている。

 一方の日本M&Aセンターは業界最大手で、創業者で会長を務める三宅卓氏は、M&A仲介業を世に広めた開拓者。2025年6月からは、自主規制団体であるM&A支援機関協会の代表理事も務める、M&A仲介業界の“顔役”だ。

 紹介を受けた数日後、ジャパンM&Aソリューションの担当者から連絡があった。

「ジャパンM&Aソリューションの担当者は動きが早かったんです。すぐに買い手候補だという企業のリストを持ってきました」

 向笠社長は、ジャパンM&Aソリューションの担当者との面談をこう振り返る。

 そして持ってきたリストの中から、担当者はルシアンホールディングス(HD)という会社を紹介した。

 このとき、ルシアンHDが世間を騒がせる騒動を引き起こし、向笠建設は窮地に追い込まれることになるなど、誰一人として想定していなかった――。

(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)

片田江康男(かたたえ・やすお)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。

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