ファミレスに現れた
M&A総合研究所の担当者
誠美工業所がM&Aを検討し始めたのは2023年秋ごろ。コロナ禍が終わり、将来的な事業や資金繰りに不安を覚えたことがきっかけだった。
そこで、中小企業のM&Aについて、盛んに宣伝していたM&A仲介会社に相談してみることにしたという。
最も積極的にアプローチしてきたのが、M&A総合研究所。連絡を取ってみるとすぐに返答があり、担当者と会うことになった。
M&A総合研究所は2018年に設立。M&A仲介業界内では後発組だが、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げ、業界4位に上り詰めていた。
M&A総合研究所との最初のミーティングは2023年10月、会社近くのファミリーレストランで行われた。三浦氏はこう話す。
「担当者はしっかりした印象でした。M&A総合研究所のグループ会社のM&Aファイナンシャル(注:現M&Aプライムグループ)の代表取締役COO(注:最高執行責任者)の名刺も持っていたので、幹部クラスなんだろうと思いました。M&Aなんて初めてだったので、知識もありません。だから、頼もしく思えました」
第一印象が悪くなかったこともあって、最初のミーティングから1カ月後の11月、M&Aへ向けて助言を受けるための「アドバイザリー業務契約書」をM&A総合研究所と結んだ。
その後、担当者から買い手企業に関する連絡が来たのは年が明けた2024年初旬。そこで紹介されたのがマイス社だった。
三浦氏は当時のことを次のように話す。
「複数の会社を買収している企業だと聞きました。それなら、うちの会社の資金繰りは心配ないはず。そんな会社の傘下に入れば安心だと考えました」
その後、マイス社の代表取締役であった田端弘文氏(仮名)との面談が、M&A総合研究所の担当者のアレンジによって二度設定された。
田端氏との初面談は2024年4月1日に羽田エクセルホテル東急のミーティングルームにて。二度目も同じく羽田空港第2ターミナルビル4階出発ロビーの会議室「風」で、約4カ月後の8月2日に行われた。M&A総合研究所の担当者も同席していたという。
二度目の面談から2週間弱経った8月15日、三浦氏は会社の株式をマイス社に売却。マイス社による買収が完了した。
だがその後、誠美工業所は買収から約4カ月で資金ショートを起こすことになる。一体、マイス社による買収で何が起きたのか――。
(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。
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