“億円プレイヤー”も夢ではない
インセンティブ報酬制度
稼ぐ思いが強い人材が集まり、その思いを実現しているわけだが、なぜこれほど高い年収を稼げるのか。
その理由がインセンティブ報酬制度だ。
これは、M&Aを成立させると、仲介会社が得る仲介手数料の一部が、M&Aを手がけた担当者個人に報酬として支払われる制度のことを言う。各社それぞれ計算方式は異なるが、業界内のほとんどの社にはインセンティブ報酬制度がある。
当然固定給も支給されるが、低く抑えられていることが多い。このため、M&Aを成立させればさせるほど、インセンティブ報酬制度によって年収は上がっていく。
一発当てて実績を残せば、年齢や社歴に関係なく年収は青天井。“億円プレーヤー”も夢ではない。稼ぎたい人材にとって、これほど魅力的な報酬制度はないだろう。
裏を返せば、M&Aを成立させなければ前述した平均年収は到底稼ぐことはできない。そのため、M&A仲介会社の社員たちは、血眼になって売り手企業と買い手企業を引き合わせ、M&Aの成立を目指す。
もちろん、純粋にM&Aが好きだとか、M&Aを通じて日本の産業界に貢献したいという人材もいるだろう。
だが、前出のM&A総合研究所の現役社員やOBが語るように、一般的な日本企業では稼げないような高年収を得る目的で、M&A仲介会社に入社する者が多いのが実情だ。
そんな心理状態のM&A仲介会社の社員にとって、買収に意欲的なストロングバイヤーは、実にありがたい存在だ。検討に時間をかけず、提案すればすぐに買収してくれるため、まさしく“上客”である。
この高額なインセンティブ報酬制度こそ、「とにかく成立させる」という歪んだ力学を生み出し、顧客軽視のトラブルを引き起こしていく。
(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。
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