不正を報告した役員は冷遇
現役社員も首をかしげた経営陣の処分内容とは?
同調査報告書では、取締役による直接の指示や関与は認められなかったと結論付けている。複数の部長と関係者も、私の取材に対して“チョキチョキ”や“ペタペタ”を行う指示はなかったと話す。
だが、不適切会計が行われ、結果的に投資家に対して間違った数字を開示することになった経営陣の責任は重大だ。
2022年2月、三宅卓会長は任期満了まで月額報酬50%減額に加えて自主返納50%、楢木孝麿副社長は報酬減額30%と自主返納20%に加えて副社長から専務取締役への降格、当時常務取締役だった竹内直樹社長は月額報酬30%と自主返納20%に加えて取締役への降格と、営業本部長からの退任などの処分が科された。
しかし、それよりも社内で衝撃が走ったのは、三宅会長らの処分が発表された約1カ月後。部長など社員に対する処分内容が公表された時だった。
なんと部長5人が諭旨解雇となったのだ。
当時、ある現役社員はこう話していた。
「直接的な指示はなくても、取締役からの厳しいプレッシャーで(不適切会計を)やらざるを得なかったことは、社内の人間なら誰でも知っていますよ。だからこそ社員の多くは、部長5人が諭旨解雇になっていて、三宅さんと竹内さんが減給と降格だったことに納得できていないんです。5人を(諭旨)解雇にするなら、三宅さんと竹内さんも辞めるべきですよね」
一方で、こう話す別の現役幹部もいた。
「(諭旨解雇となった)5人は程度の差はあっても、不正に手を染めていたのは事実。諭旨解雇は仕方ないことですよ」
さらに社員たちを動揺させたのは、不適切会計に社内でいち早く気付き、三宅会長に報告したW取締役が大阪支社担当に追いやられたことだろう。
W氏は、2008年に日本M&Aセンターに新卒で入社した生え抜き社員。再編機運が高まっている特定の業界に特化し、合併や買収を仕掛けて企業の成長を促す米国流のスタイルを取り入れた。
それまで闇雲に“とにかくくっつける”ことばかり考えていた業界に新風を吹かせた。それが大成功したことで、各社がその手法を真似し、今ではスタンダードになっている。
そんな実力者を本流の営業本部に置かず、大阪支社担当にしたことに、当時、現役の社員はこう話していた。
「三宅さんは、なんだかんだ数字を作る竹内さんが好きなんですよ。Wさんは飛ばされちゃったんです」
結局、W氏は大阪支社担当を1年務めた後、「一身上の都合」で2023年3月にひっそりと同社を去っている。
産業界の長年の課題である後継者不足や高額な報酬制度は、M&A仲介会社に急成長をもたらした。しかし、その一方で「売上げさえ上げればいい」という発想を組織に根付かせたとすれば、この不適切会計は業界全体が抱える構造的な問題を映し出したできごとだったと言えるだろう。
(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。
Key Visual by Kaoru Kurata, Kanako Onda







