首相就任後、初めて全国戦没者追悼式参列した高市早苗首相。式辞でかつてアジア諸国にもたらした甚大な犠牲には触れず、「反省」を口にすることはなかった首相就任後、初めて全国戦没者追悼式参列した高市早苗首相。式辞でかつてアジア諸国にもたらした甚大な犠牲には触れず、「反省」を口にすることはなかった Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

先の戦争の歴史認識に触れず
アジア諸国はどう受け止めるか

 8月15日に、第81回全国戦没者追悼式が行われ、参列された天皇陛下は昨年同様「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」などとおことばを述べられた。

 一方、首相就任後、初めての参列となった高市早苗首相は、式辞で「戦争の惨禍を二度と繰り返させない。(略)この決然たる誓いを世代を超えて継承し貫いてまいります」と述べたものの、かつてアジア諸国にもたらした甚大な犠牲には触れず、「反省」を口にすることはなかった。

 高市首相が過去、国会議員として国会などで語っているところから推測すれば、「先の戦争は自衛戦争であり謝罪すべきではない、(戦争の)当事者でないものが反省を口にすべきではない」ということなのだろうか。

 だが、首相個人の歴史認識が仮にそうであったとしても、政府としての歴史認識は、戦後50周年の1995年に発出された「村山談話」に盛り込まれている通り、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明」するということだろう。

 村山談話は閣議決定されており、その後の歴代首相により継承された。

 歴史認識の問題は、日本が戦後アジアとの関係を作るうえで避けては通れない問題だった。

 サンフランシスコ平和条約に定められた戦後賠償・補償もさることながら、ほとんどの国が独立間もない発展途上国であったところから、侵略・植民地支配を受けた日本に再び圧迫されるのではないかという警戒心が強くあった。

 これにどう対処するのかが、戦後の日本外交にとっての課題であり、その行きついた先が「村山談話」だったはずだ。

 過去への反省が、首相の言葉から再び消えたことは今後にどう影響するのだろうか。

 とりわけ、首相自身の台湾有事「存立危機事態」発言を機に中国は対日強硬姿勢を強め、日中関係は冷え込んだままだ。北朝鮮はミサイル発射実験や核開発を続ける。その一方で、米国は自国第一で従来ほど同盟国を重視しなくなった。

 日本のアジア外交は一段と漂流の気配だ。