逃げのピボットはダメ

 余談ですが、最近「ピボット」というオシャレに聞こえてしまう流行り言葉に誤魔化され、自分達の事業をやり切ってもいないのに安易に逃げるスタートアップも多いことに、若干の危機感を覚えます。ピボットする際は、当初想定していた仮説、つまり市場の進化なり、ユーザの変化なり、自社の強み構築なりにおいて、何は正しく何は間違っていたという検証をしたうえで、仮説が間違っていることが戦略の微修正で対応できないことが判明して初めて事業転換すべきです。なんとなくうまくいっていなから、単に競争が厳しいからという感覚論での逃げの事業転換はすべきではありません。

 ビジョンで一本筋が通っていれば、やりきるんだという固い決意と、苦しいときに逃げたくなっても、そのビジョンへの想いが支えてくれます。やはり、大きなことを成し遂げたい、社会に大きなインパクトを与えたいと思ったら、何を成し遂げたいのか、どれくらいの規模を達成したいのか、どのような美学を思ってそれを成し遂げたいのかを、自分達の中で明確に持っていることが重要です。

 そういう意味では、ビジョンは迷ったときに、常に向かうべき大きな方向を指し示してくれる羅針盤と言えるでしょう。
「今やっている事業はインターネットを通じて世の中を良くするということに繋がるのか?」
「この事業を続けていて、その先に1000億円事業があるのだろうか?」
「このようなやり方は自分達の流儀にあうか?」
などと常に自問自答することで、短期的な行動の指針となるのです。

ビジョンの3つの必要要件

 では、会社の魂とも言うべきビジョンはどのように作るべきでしょうか?

 ビジョンでは、

1. 成し遂げたいこと:何を目指すのか
2. 目標:成し遂げるためにはどのような定量的な指標を達成することが必要なのか
3. 美学:どのような価値観、スタイルで目指すのか

を決める必要があります。

 決めると言ってもただ机上で論理的に決めるだけでは魂がこもったものにはなりません。創業メンバーが腹の底から納得でき、その他のメンバーにも共感できるものにする必要があります。その点、ビジョンは“作る”というよりも、自分達の中にすでにある「想いを導き出し、言語化する」と言ったほうがしっくりくるかもしれません。