その1「成し遂げたいこと」

 まずは、成し遂げたいことを明確にすることがすべての始まりです。これは何をしたいか、自分達はどうありたいかといった意志の問題で、正解かどうか、勝てるかどうかということではありません。自分達が何のためにスタートアップをやっていて、どんな所まで到達したいのか、膝を突き合わせお互いの中から引き出していくしかありません。

 このとき気をつけるべきは、自分達がやりたいと思っていることの根っこにある普遍的なことに目を向けそれを言語化することです。ビジョンとは5年、10年、理想的には100年のスパンで自分達が目指す所(場合によっては自分達がいなくなった後でも組織が永続的に目指せる“到達できない到達点”)であり、だからこそ常に一定方向を指し示して自分達を導いてくれる羅針盤なのです。

 ですので、今現在表面的に自分達がやりたいと思っていること、たとえば「モバイルのソーシャルゲームをやりたい!」と思っていても、その根底の思いが「ゲームでみんなを楽しませたい」なのか、「モバイルというインターネットの新しい形で社会を変えていきたい」かによって大きく違います。

「ゲーム」が根底にあるのであればモバイルという提供形態にこだわらず、将来出てくるであろう新しい形態でもどんどんゲームを提供していくことになりますし、「モバイル」が根底にあるのであればゲームにとらわれずさまざまなジャンルのモバイルサービスを展開していくことでしょう。自分達の想いの源泉がどこにあるのかを徹底的に掘り出して、共有可能な言葉として表現することが重要です。

グリーとnanapiが「成し遂げたいこと」

 たとえば、グリーのビジョンは「インターネットを通じて、世界をより良くする」です。グリーの創業メンバーは社長の田中さんをはじめインターネットが大好きで、その可能性をとことん信じているメンバーです。仮にグリーが「PCのSNSを通じて世界をより良くする」などとしていたら、インターネットの主役がPCからモバイルに移行していく流れについていけてなかったかもしれませんし、ソーシャルゲームという自分達が持続的に成長していくための収益エンジンを発明できていなかったかもしれません。あくまでグリーの根幹には、インターネットが社会を変える無限の可能性を信じ、それを実現していこうという意志があるのです。