自己修復する家「ファブ・ハウス」をつくる!
――ファブラボ・バルセロナの大胆な試みとは?

 今年の横浜開催の次、来年の第10回世界ファブラボ会議が開催されるのは、スペインのバルセロナにすでに決定している。ウェブサイトももうあるようだ。バルセロナは、かれこれ10年ほど前からファブラボを中心としたまちづくり、都市デザインを続けてきた古参である。もともとは造船所だった古い巨大な建物を借り受けて、そこで建築の大学院大学iAAc(Institute for Advanced Architecture of Catalonia) を運営しながら、市民工房ファブラボを併設させている。

バルセロナで開かれる第10回世界ファブラボ大会(Fab10)のウェブサイト

 バルセロナのファブラボが世界をあっといわせたのは、2010年、"Solar Fab House"という住宅を発表した時だった。彼らは、CNCルーターとレーザーカッターを用いて、すべて木材から自前で切り出した部材を、まるでプラモデルのように組み立てて、家一軒をまるごとファブラボで自作してしまったのである。そして、太陽の軌跡にぴったり沿う位置に、太陽電池パネルを並べて貼りつけて、自家発電を行うようにした。もちろん家具や内装もファブラボ製である。

Solar Fab House
中の様子はこちら

 このSolar Fab Houseはその後も改善が続けられ、現在ではバージョン2が出来上がっている。この住宅には、いずれ小型のファブラボ、すなわち工作室が取り入れられる予定もあるという。工作室が住宅に導入されれば、もし住宅が壊れたり、あるいは改築が必要になったりしたとしても、住んでいる自分たち自身でそれを行うことができる。「自己修復」の機能があらかじめ内側に組み込まれている「家」なのである。前回の連載で紹介した「3Dプリンタで3Dプリンタをつくる」の建築版である。

よりよい「まち」は、自分たちでつくる
市民発のオープン・イノベーションが都市を変える

 さらに2年前、ペルーで開催された第7回世界ファブラボ会議にはバルセロナ市長が直に参加した。その後、ファブラボが都市計画の中心施策となり、ファブラボの代表ヴィンセント・グアラートが、シティ・アーキテクト(都市設計者)に就任することが決まった。来年までに、市内に6~8ヵ所(結果的に「区」にひとつくらいの単位)ほどのファブラボを新たに設置することが準備されている。

 彼らは、衣・食・住・遊にわたって、「必要とするものを自分たちでつくる、自己充足(Self Sufficientな)都市」を実現する予定だという。「地産地消」の流れが、農や食だけでなく、住環境や都市をはじめ、生活のあらゆる局面に渡って広げられていく。「新しい都市」の提案は、いうまでもなく「新しいライフスタイル」の提案でもある。ファブラボは結局、私たちがいかに生きるか、いかに暮らすか、といったテーマにつながっていく