彼らの計画はまた、物理的な「建築物」に留まるものではない。ファブラボ・バルセロナは最近、「スマートシティズン・センサーキット」という小型の電子デバイスを発表した(詳細はこちら)。これは、光や空気、電気の使用量など、環境の状態を市民一人ひとりが測定し、インターネット上のサーバにアップロードすることのできるセンサである。設計図がオープンソースになっているので、市民は自分でもつくることができる。つくりかたがわからなければファブラボに行ってつくりかたを教えてもらうこともできる。そしてできあがったら、自宅に取り付けて、自分の生活や環境の状況などを測定する。
市民が大勢で同時に行えば、都市全体のダイナミックな様子の全体が可視化され、いまどこで、どの資源が、どれくらい消費されているのかが「見える化」されるのである。当然、今までは見えなかった都市生活の細部がデータ化されてくる。このように市民が参加することによって、必要最小限の効率的な都市マネジメントが可能になってくる。これが、彼らの目指す「スマートシティ」のかたちである。
Smart Citizen Kit from Mind the Film on Vimeo.
ここで彼らが行っている創造活動を、いわゆる「ものづくり(製造業)」という範囲で限定できないことはもうおわかりだろう。建築からセンサまでを立体的に組み合わせた、21世紀を生きるための「都市環境システム」を実装しているのである。そこには、ソフトウェアの技術、ハードウェアの技術、ウェブの技術、建築や都市的な構想力と設計力など、あらゆる分野の知識が結集されている。これを生み出したものこそ、異なるスキルを持つ人々のつながりと衝突であり、その「接着剤」となったのが、オープンなイノベーションの現場であるファブラボなのだ。
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なお、今年に入って、横浜市はバルセロナと「スマートシティ」の協定を結んだ。今年の会議をきっかけに、ファブラボを通じた交流も生まれるだろう。「まちづくり」や「都市づくり」でも、2つの都市で互いにアイデアを交換できるかもしれない。
現在、横浜では国内6番目となるラボ「ファブラボ関内」の設立準備が進められているが、そこでは、「まち」に進出して移動型ワークショップを行うための「ファブ屋台」が試作されている。たとえばこうしたアイデアを、横浜とバルセロナで同時に試してみたらどうだろうか?