東電分解#5Photo:Vantor/gettyimages

福島第一原子力発電所の事故処理費23兆4000億円。東京電力ホールディングス(HD)に課された「無限責任」の下で構築された処理スキームは、震災から15年を経て破綻の危機にひんしている。株価低迷で消え去りつつある「除染費4兆円の株式回収」、デブリ難航で不足必至の廃炉費――。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『東電分解』の#5では、当初の青写真から大きく乖離し、機能不全に陥った東電HDの過酷な実態をあぶり出す。(ダイヤモンド編集部 鈴木文也)

無限責任の免責規定は認められず
震災から15年も続く福島責任の貫徹

 2011年の福島第一原子力発電所事故では東京電力(当時)の責任の有無が最初の争点となった。原発事故の賠償について定めた原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)では、事故の故意性や過失の有無に限らず無限に責任を負うという「無過失責任」と「無限責任」の二つが定められている。

 ただ、法律はあらゆる状況に対応するための余白を備えている。原賠法で事業者の責任についてまとめた第3条の後半には「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」という条文が記されている。事故の理由によっては、原発事業者の責任を免除する免責規定だ。

 東電は東日本大震災という未曽有の災害によるものだと訴えたが、政府はその免責を認めず、東電は今なお掲げ続けている「福島責任の貫徹」を背負い続けることになった。

 東電が無限責任を負うという方針は固まったものの、震災翌年の12年5月時点での避難者数は約16万人。巨大インフラ企業とはいえ、一企業だけで負担できるものではない。そこで考え出されたのは、極めて複雑で、東電を責任から逃すまいとする国の意向がにじみ出た計画だった。

 震災から15年が経過し苦肉の策として生み出された事故処理スキームはどの程度効力を発揮しているのか。次ページでは、構想から懸け離れた東京電力ホールディングス(HD)の惨状をまとめる。