沸騰!エンタメビジネスPhoto by Yoko Suzuki

興行収入180億円超えの大ヒットとなった「映画 ちいかわ」。ところが国内での配給を担当した東宝の第2四半期決算は減収減益となっている。ちいかわブームに乗れない東宝の事情とは?また、自社制作アニメ事業を次世代の成長の柱とする東宝の今後とは?連載『沸騰!エンタメビジネス』の本稿でアナリストが分析した。(東洋リサーチアドバイス シニアアナリスト 安田秀樹)

大人気ちいかわのヒットでも配給した東宝は冴えない決算
減収減益の理由はどこにあるのか?

 今回は東宝の決算を中心に、アニメ市場の先行きについて論じたい。先月の本連載でも触れたように、「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」(以下、「映画ちいかわ」)がこの夏の大きな話題となった。興行収入は先月からさらに20億円以上伸び、10月25日で184.9億円を突破した。SNS上でも、リピーター向けに配布される入場者特典を巡って連日話題となる状況だった。

 また見逃せないのが、くら寿司で起きた「ちいかわ」コラボグッズの横領事件である。「映画ちいかわ」とのコラボ企画として、くら寿司は店内ゲームの「ビッくらポン!」で限定グッズを景品として提供していた。だがSNS上で、「たくさん寿司を食べても当たらない」という指摘が相次いだことで問題が表面化し、コラボ開始前に店舗関係者が景品を抜き取っていたことが発覚した。この件は悪質な不祥事だったこともあり、瞬く間に拡散されて炎上へと発展した。発覚直後にはくら寿司の株価も下落した。

 そして筆者もメディア向けに「ちいかわ」視点からのコメントを出すことになったが、この事は長らくサブカルチャーを担当している筆者にとっても初めての経験であり、驚きを隠せなかった。この一件から筆者が感じたのは、アニメはもはや子供や特定の一部の層だけのものではなくなり、すでにメインカルチャーの域に到達しつつあるのではないかということである。

 アニメを見ることが子供だけではなく、40代半ばまでの幅広い層まで当たり前になっているのだ。メディア側も、この事件のニュースが幅広い世代に読まれると判断したからこそ、筆者にコメントを求めてきたといえるだろう。

 そのような客層の幅広さで「映画ちいかわ」は10月に入っても、劇場では満席になるほどの活況を呈している大ヒットとなった。国内の劇場での配給を担当しているのは東宝である。だがこのヒットにもかかわらず意外にも東宝の上期決算は売上高が前年同期比3.4%減の1851億円、営業利益が同24.8%減の309億円と減収減益にとどまった。今夏の東宝はちいかわ以外にもヒット作が多く、多くの劇場で稼働率が上がっている状況にあるにもかかわらずである。

 好調なはずの東宝の決算がなぜ減収減益に終わってしまったのか、そして今後のアニメブームはどうなっていくのかについて、話を進めていきたい。