もっとも、孫氏が勘だけで話を遮ったわけではない。同じ記事によれば、創業者が孫氏に会う前に、スタッフが事業を細かく調べ上げている。面談が始まる時点で、孫氏はおおよその見当をつけていた。派手な場面の裏には、地味な下調べがあったわけだ。
自分の予想が間違っている
可能性にまで目を向けられるか
計画を調べ上げてから、条件を問い直す。この進め方を考えるうえで、2024年に興味深い論文が出ている。イタリアのボッコーニ大学のアルナルド・カムッフォ氏らが米経営学誌『Strategic Management Journal』に発表した「起業家の意思決定への科学的アプローチ――大規模な追試と研究の拡張」だ。
起業家なら、自分の事業が成功するという見通しを立て、市場調査などで確かめることはあるだろう。しかし、自分の予想が間違っている可能性まで積極的に確かめ、その結果によって事業の方針を変えるとなると、話は別だ。
研究チームは、イタリアと英国の計759社を対象に4つの実験を行った。企業を無作為に2つのグループに分け、どちらにも経営研修を受けさせた。ただし、一方には、自分の事業がなぜ成功すると考えるのかを具体的な仮説にし、調査結果と照らし合わせて検証する方法を教えた。自分の考えを裏付ける材料だけでなく、間違っていることを示す材料にも目を向けるという方法だ。
その結果、この方法を学んだ企業では、見込みの薄い事業案を打ち切る判断が増えた。また、戦略をまったく変えない場合や何度も変える場合が減り、変更回数が少数回に集中する傾向も報告された。研究者たちは、証拠に基づいて事業案を検証し、必要なときに見直す姿勢が促されたと解釈している。
計画を見直すには材料がいる。ある商品が売れると思うなら、誰が買うのかを予想し、実際にその人に使ってもらって反応を見る。予想と違えば、中身か売る相手を変える。頭の中でこねくり回しているだけでは、この材料は手に入らない。
仕事ができる人と
できない人を分ける重要な違い
さて、冒頭の怒声とロボット企業への提案を並べてみると、孫氏がどんな仕事の姿勢に我慢ならないのかが見えてくる。







