スムーズな旋回で、後席の揺れを消す

山:操安の開発メンバーには、最初から二つだけ「これだけはやってくれ」とお願いしました。

 一つ目は、ハンドルを切った瞬間からクルマがスムーズに動くようにすることです。

 先代のCX-5も曲がる性能自体は良かったんです。ただハンドルを切った瞬間、車体が少しグラッと動いて、それから旋回していくようなところがありました。

 これは運転している人よりも、後席の人の方が強く感じるんですね。運転している当人は、自分でハンドルを切っているからクルマがどう動くか予測ができる。でも後席の人はそうではありません。

 実は私、ローンチイベントなどで、先代CX-5の後席に1000キロぐらい乗った経験があるんです。山のワインディングに入ると、ドライバーがハンドルを切るたびに体が振られるような感覚がありました。それが気になっていたので、新型ではハンドルを切った最初から、余計な動きをせずにスムーズに旋回するようにしてほしい、と伝えました。

 もう一つは荒れた下り坂での安定性です。

荒れた下り坂の「フローティング」を消す

F:荒れた下り坂。これはまたピンポイントな……。

山:僕らはそれを「フローティング」と呼んでいます。少し速度が高い状態で、路面の凹凸がある下り坂を走ると、接地感が薄れてヒヤッとすることがあります。バネを硬くすると、そういう傾向が出やすくなるんです。路面のいいところではしっかりしていても、少し荒れた道、特に下り坂ではクルマが跳ねるような動きが出て、不安に感じることがある。

 新型では、そういう場面でもしっかり接地感があって、安心してハンドルを切れるようにしたかったんです。

F:なるほど。フローティング。

バネの役割は反力、動きを止めるのはダンパー

山:はい。そこで重要になるのが、バネとダンパーの役割分担です。

 バネは変位量に応じて反力が決まりますから、縮めば伸びようとする。いろいろな動きが出てきます。ダンパーはその動きを減衰させる役割です。

 最初の反力はしっかり確保しなければいけませんが、ダンパーの側で動きをきちんと減衰させることで、余計な動きを抑えることができるんです。

 その結果、足回りがしっとり、しなやかに動いて、ハンドル操作に対して車体がリニアに反応するようになる。

 今回こだわったのは、エンジンの出力の出方、ハンドルを切り始めたときの反応、その後の車体の動きまで、統一感を持ってスムーズにつながることでした。

 フェルさんが言ってくれた「高級車のような乗り心地」というのも、おそらく余計な動きがないことが理由ではないかと思います。