乗り心地を良くするというと、「柔らかいサスペンション」を想像しがちだ。しかし単純にバネを柔らかくすれば、今度は車体がフワフワして落ち着かなくなってしまう。硬くすれば、今度は路面の凹凸で跳ねてしまう。大切なのは、「必要なときに必要なだけ動き、余計な動きを残さない」ことなのだ。
興味深いのは、山口さんが先代CX-5の後席に1000キロも乗っていたという事実である。
ロータリーのスポーツカーを愛する人が、新型CX-5の開発でまず気にしたのが、後席の乗員が山道で振られないことだった。スポーツカーの走りを知り尽くした人だからこそ、「ファミリーSUVに必要な走りは別のところにある」と見抜いたのだろう。
「お客様が本当に欲しいもの」を起点に
F:それぞれのエンジニアは、自分の担当する性能を少しでも良くしたいとそれぞれ考えますよね。でもクルマは何か一つの性能だけを追求しても、全体として良くなるとは限らない。今回、そのあたりの開発はどのように進めたのですか?
山:今回のCX-5は「お客様が本当に欲しいもの」を起点にして、クルマを造っていこうと考えました。
フェルさんの言う通り、エンジニアは、自分の担当する性能を少しでも良くしたいという思いがある。例えば操安の担当者だったら、ライバル車よりもいい性能を出したい。それが自分たちの使命だと思うわけです。
もちろんそう思うのは良いんですよ。良いですし大切なことです。でもある性能を良くするために、ほかの性能を犠牲にしても良いのかと。お客様が本当に欲しいのはそこなのかと。
「お客様が本当に欲しいSUVとは?」 Photo by A.T.
山:だから僕は優先順位を、開発に関わる全員が同じ価値観で判断できるようにしたかったんです。
F:優先順位を同じ価値観で?







