架空の母親「サラさん」を、全員で思い描く

山:開発に関わるエンジニアは数百人います。サプライヤーまで含めれば何千人という規模になる。その人たちに、ただ「お客様のことを考えて開発してください」と言ったって同じ方向には進める訳がない。そこで考えたのが、具体的なお客様の姿を思い浮かべられるようにすることでした。

 そのために設定したのが「サラさん」という架空の女性です。

 サラさんはアメリカに住んでいます。仕事をしていて、夫がいて、子供がいる。通勤もあれば買い物もある。子供の送迎もしなければならない。毎日とても忙しいお母さんです。

 そんな忙しい生活を前向きに楽しみたいと思っている。現在もCX-5に乗っていて、次もまたCX-5を選びたいと考えている。そういう人物像です。

F:アメリカ人女性のサラさん。

架空のCX-5オーナー、アメリカ人女性の「サラさん」架空のCX-5オーナー、アメリカ人女性の「サラさん」 Photo by A.T.

山:CX-5はアメリカが最大の市場で、女性のお客様も多い。しかもCX-5から再びCX-5に乗り換えてくださる方がとても多いんです。

 アメリカでは3年程度のリース契約が多いですから、3年間乗って良かったと思った方は、また同じクルマを選んでくれる。逆に良くなかったと思ったら、躊躇なくほかのクルマに移ってしまう。だからそういう方が毎日の生活で何を求めているのかを、具体的に考えられるようにしたかったんです。

 例えば操縦安定性の担当者が、ダブルレーンチェンジの性能をコンマ1秒でも良くしようと考えたとします。でも、そのためにほかの性能を犠牲にしていいのか。果たしてサラさんは本当にそれを望んでいるのか。

 インテリアも同じです。子供が乗り降りしやすいのはどういう設計か。室内の広さを決める人なら、サラさんの生活を考えたときに何を優先するべきなのか。

 それぞれのエンジニアが、サラさんの暮らしを頭に思い浮かべながら、自分で考えられるようにしたかった。

後部座席の乗り降りがしやすいよう、開口部が広くなっている後部座席の乗り降りがしやすいよう、開口部が広くなっている Photo by A.T.