地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#3210月29日、池田泉州ホールディングス(HD)と滋賀銀行は経営統合で基本合意した。左から、池田泉州HDの阪口広一社長、滋賀銀行の久保田真也頭取 Photo by Yasutaka Nagayoshi

10月29日、滋賀銀行と池田泉州ホールディングス(HD)が2028年4月の経営統合に向けて基本合意した。その背後で存在感を放ったのが、両社の大株主で“再編仕掛け人”のありあけキャピタルだ。同日、同社の運用ファンドは保有する池田泉州HD株を全て滋賀銀行に売却する契約を締結。近畿・東海の地銀5社の株式大量保有で築いた“ありあけ包囲網”は、今回の統合をどう動かしたのか。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』#32では、アライアンス締結からわずか半年の“スピード統合”が抱える課題と、全国の都市圏周辺で一段と脅威を増すありあけキャピタルの影響力を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

「提携優先」からわずか4カ月で急旋回
近畿最大の地銀誕生に“再編仕掛け人”の影

「経営統合など次のステージを考えるより、まずは滋賀銀行とのアライアンスを具体化することが最大のミッションだ」

 6月30日配信の本特集のインタビューで、池田泉州ホールディングス(HD)の阪口広一社長はこう語っていた。

 それからわずか4カ月。10月29日、池田泉州HDと滋賀銀行は2028年4月の経営統合に向けて基本合意した。銀行同士は合併せず、池田泉州HDの商号を変更した統合持ち株会社の傘下に両行を置く方針だ。統合が実現すれば、総資産で京都フィナンシャルグループを抜き、近畿最大の地方銀行グループが誕生する見込みだ。

 今回の経営統合で目を引くのは、基本合意に至るまでのスピードだ。SBI証券の鮫島豊喜アナリストは「アライアンスから経営統合に発展したケースはあるが、その中でも相当早く経営統合に発展したので、率直に驚いた」と話す。

 両社が「池田泉州・滋賀アライアンス」を締結したのは4月17日。経営統合の基本合意までわずか半年余りだった。過去の地銀再編では提携から基本合意まで3年以上を要した事例が多く、今回の“スピード統合”は異例といえる。

 この急展開の背後で存在感を放ったのが、両社の大株主で、地銀株を中心に投資するファンドを運用するありあけキャピタルだ。

 統合会見の直前、同社は保有する池田泉州HD株の全てを滋賀銀行に売却する契約を締結したと発表した。

 ありあけキャピタルが統合に与えた影響について、滋賀銀行の久保田真也頭取は「経営統合は両社の自主的な判断によるものだ」と否定。阪口社長も「ありあけキャピタルの意向によるものでは一切ない」と言い切った。ありあけキャピタルも「当社は同協議には関与しておりません」と説明している。

 だが、ありあけキャピタルが今回の統合と無関係だったとみるのは早計だ。

 同社には千葉興業銀行の保有株を千葉銀行に売却し、再編への道筋を付けた先例がある。今回も滋賀銀行と池田泉州HDの株式を大量保有して経営にプレッシャーをかけ、アライアンス締結後には池田泉州HD側の警戒感を強める動きも見せていたからだ。

 次ページでは、経営統合に至るまでのありあけキャピタルの動向を検証。異例のスピード統合が抱える課題と、全国の都市圏周辺の地銀にとって一段と脅威を増すありあけキャピタルの影響力を明らかにする。