すっかり生活に定着しているネット通販だが、経済産業省によると2011年時点のEコマース市場規模は約8.4兆円。12年には約9.1兆円に達したと試算されている。
ネット通販業界の中には、年々2ケタ成長している企業も珍しくない。個人消費が低迷している現在の日本において、数少ない好調な小売業カテゴリといえるだろう。
そんな通販業界において、靴や洋服、アクセサリーなど、身につけるアイテムは不利とされている。現物を目の前にして、実際に着たり履いたりしなければ、自分に合うサイズがわからないからだ。
自宅にいながら買い物できるのがネット通販のメリットにも関わらず、サイズが気になり電車に乗って店頭で現物を確認、自宅に帰ってわざわざネットで…、という人もいる。
サイト上に細かくサイズが明記されていても、届いた商品が微妙に合わないという失敗をしたことがある方も多いだろう。特に靴の場合、足に合わなければ健康にも影響が出る可能性が高いだけに、慎重になるのも当然だ。
届いた商品を自宅で「試着」
不要な商品は無料返品
そんなユーザーニーズに応えるべく、最近増えてきたのが「買ってから選ぶネット通販サイト」である。代表的なところで、靴とバッグを主に扱う「ロコンド」や、大手ECサイトのアマゾンが運営する「Javari」がある。いずれも【送料無料・返品無料・自宅で試着可能】を謳う。アパレル以外ではメガネ専門サイト「Oh My Glasses」が同種のサービスを開始している。
従来も「購入後○○日以内なら返品可能」「まずはお試しセットから」といった手法があったが、ロコンドは社内にコンシェルジュを用意し、ユーザーからの問い合わせに専任であたらせるなどサービスの充実に力を入れ、業績を伸ばしている。「今年の春夏で約100ブランド、2015年度までに1000ブランド超を狙う」と、同社の田中裕輔社長は話す。
Eコマース市場拡大の背景には、インターネット普及率の向上はもちろん、スマートフォン・タブレットなど通信インフラの改善、ユーザーの利便性の向上など、さまざまな要因がある。
また、世帯構成別でみると、一人暮らしなど、買い物にかける時間が限定的となる世帯は、通販サイトの利用率と平均購入額が2人以上で暮らしている世帯よりも高い。
商品選びに時間をかけたくない、だけど自分にピッタリ合ったサイズ、気に入った色柄や機能の商品を選びたいという人が増えるなか、「買ってから選ぶ」方式は、さらに拡大していきそうな勢いだ。
(筒井健二/5時から作家塾(R))